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※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』15 その日は特別暑い日だった。 私は疲れ果てていたが、ゆっくりに囲まれて歌わされていた。 無理に笑顔を作り、リズムをとって声を絞り出す。 「ゆっゆっゆ~……ゆ~ゆ~ゆゆゆ~……」 「ゆゆっ、ぜんぜんだめだよ!!やるきあるの!?」 「にんげんさんはほんとうにゆっくりできないわ、むきゅ!」 その時、突然、上空で物音がした。 バシュウウウ、となにかが吹き出すような音。 上を見ると、穴の口から見える空が、薄いピンク色の霧に包まれている。 「ゆゆっ!?なんなの!?ゆっくりできるもの!?」 「けむりさんはゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達はしばらくうろたえていたが、やがて弛緩して地面に横たわり始めた。 「ゆゆぅぅ~~~……なんだかとってもゆっくりできるよ……」 「ゆゆゆぅ……ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりするよぉぉ~~………」 だらしなく顔をゆるめ、地面に延びるゆっくり達。 声をかけてみても、ゆっくりするのに夢中といった様子で無反応だ。 しばらくしてから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。 待っていると、果たして人間の姿が見えた。 「圭一さん!須藤さん!」 渇望していた人間の声だった。 あの施設の男たちらしい。 あれほど見つかるまいとしていた相手に対して、私はうれし涙を浮かべて声を返した。 「助けて!!助けてーっ!!」 すぐに縄梯子が垂らされた。 「圭一さん、来たわ!助けが来たのよ!!」 「ああ」 長浜圭一はさして感動もない様子で頷いた。 「大丈夫?登れる?」 「左足だけでも充分登れるさ」 長浜圭一を先に行かせ、尻を押してやる。 彼が無事に上がったのを確認すると、私も続いて梯子を登っていった。 「ゆっくりぃぃ~~~……」 「ゆっくり………ゆっくり………」 「ゆふぅ……ゆふぅ………」 地上に上がると、全てのゆっくり達が弛緩して地面に広がっていた。 どれもが究極のリラックスといった表情で、侵入者の人間たちを前にしてさえ反応しない。 ドスまりささえ弛緩してだらしなく広がり、その下に数匹のゆっくりを下敷きにしているが気づいていない。 十何メートル離れた草地にヘリコプターが止められており、 十数人のスタッフが集まって何事か準備している。 縄梯子を垂らしてくれた二、三人の男たちに聞いた。 「これは……何をしたの?」 「『ゆっくりオーラ』ですよ。 ドスゆっくりが常に微量のゆっくりオーラを放っていて、 周囲のゆっくりをゆっくりさせていることはご存じかと思います。 そのゆっくりオーラの成分を凝縮して強化し、さらにゆっくり以外に効力が現れないように合成したものを、 ガス爆弾にして上空からここに投げ込みました」 「そんなものまで作ったの?」 「いえ、あなたの娘さんの作品ですよ」 「……そう」 ゆっくり研究の第一人者である娘なら、こういうものを作ってもおかしくなかった。 一瞬聞き流しそうになったが、私は思い当たり、聞いてみた。 「そういうものを、娘があなたたちに預けていったの?」 「そうです」 「いつ?」 「出発の直前です」 「出発前って、誰の……?」 男は肩をすくめ、地面に腰を下ろしている長浜圭一のほうを見た。 長浜圭一が言った。 「ああ、もう言ってもいいだろう。あんたがあの施設を出発する前日だよ、須藤さん」 どういうことなのか飲み込めなかった。 混乱する思考がまとまらないままに、私は質問を繰り返した。 「出発………って?どういうこと?娘が……え?」 「あとは娘さんに直接聞いたほうがいい。 おい、博士はどこにいるんだ?」 長浜圭一が男たちに聞くと、ノートパソコンを携えた男が答えた。 「今から突き止めるところです。録画した映像です」 ノートパソコンの画面に映像が表示される。 それはひどく低い視点の映像で、暗い洞窟の中を映していた。 その洞窟の中、正面にいるのは……長浜圭一だった。 視界の隅には私の姿が時々覗いている。 「昨日録画したものです」 言葉を失って凝視しているうちに、視点が変わっていく。 映像は洞窟の中から地上に移り、森の中を縫って進んでいた。 「ありすの映像ですが、この後須藤春奈博士のところへ向かいます。 たどっていきましょう」 ノートパソコンの映像で道筋を確認しながら、長浜圭一が男たちの肩を借りて森の中へと進んでいく。 私はわけもわからず、その後を追った。 「んほおぉぉぉぉ!!おねえさんのまむまむぎもじいいいいぃぃぃ!!!」 「にんげんのおはだとかいはだわぁぁぁ!!んっほおおおぉぉぉぉ!!!」 「んほほほほほほほすっきりいぃぃぃーーーーーーっ!!!」 岩壁に穿たれた自然の洞窟の中に、私の娘はいた。 上半身を露わにして横たわる娘に、何匹ものゆっくりが身をこすりつかせていた。 スカートとパンツの他に何もつけていない春奈の体中がゆっくりの粘液にじっとり濡れている。 一週間もの間、恐らく何も食べていないだろう春奈がゆっくり達の慰みものになっていた。 脳髄に焼けた鉄が詰まったような怒り、いや激怒。 怒りのあまりに声も出せず、私はその洞窟に踏み込んだ。 「ゆゆっ!!にんげんさんだよ!!かってにぬけだしたの!?」 「かってにでちゃだめよ!!ゆっくりできないわね!!」 「れいむがおくってあげるからおうちにかえろうね!!」 順番待ちらしき、入口近くにたむろしていたゆっくり達が私のほうへ跳ねてきた。 その横っ面を力まかせに蹴りつける。 「ゆびぇ!!?」 蹴ったのは一匹のありす種だった。 そのありすは蹴られた勢いで吹っ飛び、洞窟の壁に叩きつけられて潰れ、カスタードをまき散らした。 明確な殺意をもってゆっくりを殺したのは初めてのことだったが、 怒りにかられている今の私は、そのことを意識さえしなかった。 放心状態で呆然としているゆっくり達を無視し、春奈の元にたどり着く。 春奈の体に身をこすりつけているゆっくり達、いや、ゆっくり共はすっきりに夢中で私に気づかないようだった。 「まむまむ!!まむまむ!!にんげんまむまむぎもじいいぃぃぃぃんほほほほほおおおお!!」 そのれいむは、春奈の口にぺにぺにを突っ込んで顎を振っていた。 私に背を向け、全身から粘液を飛び散らせながら一心不乱に顎を振るそのゆっくりの頭には、見慣れた飾りがついている。 私の……私がつけてあげたゴールドバッジ。 「んほっ、んほっほっほっほっヤバヤバヤバイ、イクイクイクイクイクんほっほっほおおおおおーーーーーっ!! でるっ、でるでるでるよおおおおいっぱいでちゃうううぅぅ!! かわいいれいむのおちびちゃんのもとたっぷりのんでねえぇぇぇぇ!!! すっ、すっ、す、すすすすすっっっっきりいいいいいーーーーーーーーーーっ!!?」 れいむは、春奈の口の中に精子餡を流し込むことはできなかった。 射精の瞬間に後頭部を掴まれたれいむは、 私の手に掴み上げられた状態で空中に精子餡をまき散らしている。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?ゆっゆっ!?」 「………れいむ。何をしてるのかしら?」 「ゆっ!?すっ、すっきりっ!?ゆううぅ!?れいむじゃないよ!?れいむなの!?ゆっゆゆゆゆゆ」 射精直後の放心状態も手伝って状況がつかめずにいるらしいれいむを、私はそっと地面に下ろした。 下ろされたれいむは、すぐにぷるぷると体を振り、正気を取り戻したようだ。 私のほうに向かって叫びはじめた。 「おねえさんなにしてるのおおおぉぉぉ!? かってにでてきちゃだめでしょおおぉぉぉぉ!!!だれがでてきていいっていったのおおおぉぉぉ!? おねえさんはまだまだゆっくりしてないんだよ!!べんきょうしなきゃいけないんだよぉ!! わかってるの!?わがままもいいかげんにしてねえぇぇぇ!!」 バァン!! 私は靴を脱ぎ、靴の底をれいむの眼前の地面に叩きつけた。 「ゆっ」 れいむは硬直し、私の顔を見上げた。 その表情には、かつての「主」に対する感情が戻り始めていた。 「もう一度聞くわ、れいむ。私の娘に何をしていたの」 「ゆっ………ゆっ…………か、かわ、かわいいれいむをおこらないでね?ゆっくりして」 「答えなさい!!!」 再び靴を地面に叩きつける。 れいむのまむまむからちょろちょろと小便が漏れ始めた。 「ゆ…………ゆ…………ごべ、ごべんなざ……」 「誰が謝れなんて言ったの?何をしてたのかと聞いてるのよ」 「ず、ず、ずずずずずっぎ、ずっぎ………ごべ………ゆるじ、ゆるじでぐだざ……」 「すっき、何!?最後まで言いなさい!!」 「すっ、すっき……すっき……しょ………しょうがないでしょおおおおおおおおおお!!!?」 れいむは逆ギレして叫び始めた。 「これぐらいしかにんげんさんのおしごとがなかったんだよおおぉぉぉ!! かりもできないし!おうちもつくれないし!かわいくないし!ゆっくりできるおうたもうたえないし!! なんのやくにもたたないからすてようってみんながいうのをれいむがかばったんだよ!! そしたら、そしたら、ありすがいったんだよ!にんげんさんはすっきりできるってえぇ!! だからおしごとをあげたんだよ!!やっとにんげんさんのおしごとがみつかったんだよおおぉ!! おしごとをしないとおいてあげられないでしょおおおぉぉぉ!!?」 言葉を失っていると、春奈が起き上がってきた。 「春奈!」 「やるって言ったのはあたしだよ、ママ」 そう言い、春奈は周囲のゆっくり達を掴んで投げ捨て、上半身裸のまま伸びをした。 「服はどうしたの!?」 「ゆっくりが持っていっちゃった。布団にしてるってさ。 スカートとパンツは髪の毛だと同じって言ったから助かったけどね」 「春奈……」 下半身のほうを見る。足は粘液に濡れていたが、内部まではわからない。 私の視線の意味を察知した春奈が説明してきた。 「大丈夫だよ。まむまむっていうのは、ここ」 春奈は自分の口を指差した。 「ここがまむまむだって教えてあげたの。それで、みんなこの中に出す出す。 つまり、食べ物には困らなかったってわけ」 それでも、娘は辛そうに息を吐いた。 「お茶飲みたい……一週間胸焼けしっぱなし」 「水なら持ってきていますよ」 「ありがと」 男の一人が水筒を差し出し、娘はごくごくと飲んだ。 「よかった………」 私は春奈を抱きよせた。 「わっ、ママ臭っ」 「あ……ごめんなさい」 「お互い様だけどね」 春奈が立ち上がり、男から差し出された大きなタオルを肩からまとう。 「本当によかった……あなたに何かあったら、ママは……」 「ファミリードラマをやってる状況じゃないんだ、ママ。 全部計算ずくだよ、こっちは」 「……何を言ってるの?」 「あのね、ママ。もう言っちゃうけど、最初から全部バレてるの」 春奈が言うには、私がゆっくり達をあの施設から逃がすと言い出したときから、 すべては施設のスタッフに筒抜けだったらしい。 春奈が早々にスタッフに伝えたこともあるが、そもそもはすべて監視カメラに映っている。 あの施設には、ほぼすべての部屋に監視カメラがあったらしい。 最新技術による監視カメラは小型かつ目立たない形状で、私には見つけられなかった。 「ママ、ドラマや映画の見過ぎ。 ヒーロー気取るのは簡単だけどさ、正義感だけじゃ運も環境も味方してくれないよ。 ママの脱出計画じゃ大雑把すぎて、気づくなってほうが無理だったよ」 「…………じゃあ……なんで止めなかったのよ」 「使えるかなって思ってさ。 あのゆっくり達の髪飾りに細工してあるのね、カメラと発信機。 あれがあれば、どこに行っても居場所はわかるし、カメラで見てる景色や話し声も筒抜け」 「…………」 「あたしは考えたのね、もしかしたらもっとドラマができるんじゃないかって。 一旦は人間に捕まって、ひどい復讐を受けるゆっくり。 ところが心優しい人間がゆっくり達を逃がしてくれる。 さて、人間に逃がしてもらったゆっくり達はどうするか。 逃がしてくれた恩人に対してどういう態度をとるか。 そういう事、全部記録してみたくてさ」 「……どこまでもゆっくりを悪役にしたいわけね」 「そういうこと。万一あれらが、もう人間に関わらないようにしたとしても、 こっちから細工してそうせざるをえないように仕向けるつもりでした。 キャンペーンのために、そういう映像は沢山あったほうがいいし、 それから生態研究のためもあるし、あと他にも映像の使い道を考えててさ」 私はがっくりとうなだれた。 ひどい徒労感に襲われて顔を上げることもできなかった。 「……あんたって子は………」 「でも、何が起こるかなんてわかんないもんだよね、ママ! あんな穴があって、そしてこの一週間でしょ。 こんなに面白い映像が撮れるなんて思わなかったよ。ゆっくり達みんな、 あたしたちが仕向けるまでもなく、たっぷりと悪役を、というか敵を演じてくれたわ。 すぐに助けを呼ばなかったのも、たっぷり記録するためよ」 そう言って、春奈は携帯電話らしきものをポケットから取り出した。 普通の携帯のようには見えない。特殊な通信機らしい。 「すぐに駆けつけて、皆さんを助けだすことは容易でした」 背後で男が言う。 「ですが、須藤春奈博士のご指示により、しばらく時間を見ました。 すべては記録されております」 「………私のことも?」 「……失礼ながら。 ただ、あの……『問題の場面』に関しては……遠隔操作で映像記録は中断しております。 どうか御信用ください」 排便させられていた事を言っているのはすぐにわかった。 「あとね、『処置』はもう全部終わってるの」 春奈が言った。 「ママ止めようとしてたけど、出発する前にあのゆっくり達はもう処置しちゃった。 もう手遅れだよ。『計画』はもう始まってるんだ」 私は顔を上げたが、言葉は出なかった。 暴れ出したかったが、それよりも脱力感が勝っていた。 なにを言っても無駄なのはわかっていたし、自分一人だけが道化を演じ続けていたことがわかった今は空しいだけだった。 ここで怒り散らしたところで、道化は道化でしかないだろう。 「こんなこと言うのはなんだけどさ、ママは怒る権利ないんじゃない? あたしたちがこんな目に逢ったのも、元をただせばママの失態でしょ。 あたしがもし携帯電話持ってなかったら、どうする気だったの?娘の人生」 洞窟の地面を眺めながら、私は春奈の言葉をぼんやりと聞いていた。 その声を聞いても、自分の娘の声だという実感はわかなかった。 袂を分かったのだ、という気がした。 住む世界も歩む道も、娘はもう私には理解できないところにいるのだ。 「長浜さんもごめんね?足は大丈夫?」 「俺の心配はしなくていい」 「でもごめんね。まあ、もともと長浜さんが勝手に追いかけてきたんだし。 なんであんなことしたの?」 「……さあね。見届けたかったのかもな」 「わっかんないなあ」 「ゆっくりそこまでだよ!!」 振りかえると、洞窟の入り口近くでゆっくり達が固まっていた。 私のれいむ始め、娘に群がっていたゆっくりが徒党を組んでこちらを睨んでいる。 「いうことをきかないおねえさんはゆっくりできないよ!!」 「よくもありすをころしたね!!ありすにはちいさいおちびちゃんがいたんだよ!! もうしわけないとおもわないのおぉ!?」 「にんげんなんかかおうとおもったのがまちがいだったね!! こんなにあたまがわるいなんておもわなかったよ!!」 「おねえさん!!」 顎を反らし、れいむは居丈高に言い放ってきた。 「れいむはおねえさんがだいすきだけど、こんかいばかりはおおめにみられないよ!! れいむはむれのなかまだから、むれのるーるはまもらなくちゃいけないよ! ゆっくりごろしはどすにどすすぱーくをうってもらうよ!!」 「どすすぱーくだよ!!どすすぱーくだよ!!」 「ゆっくりどすのところまでついてきてね!!にげようとしてもむだだよ!! おねえさんはゆっくりつみをはんせいしてね!!れいむだってつらいんだよ!!」 私たちを促しながら、れいむ達は歩きはじめた。 私たちは眼を見合せてから、ゆっくり達の遅々とした歩みについていった。 歩きながら、れいむは何度も何度も私たち親子に話しかけてきた。 「れいむはがんばったんだからね!!ずっとがまんしておしえてたんだよ!! わるいのはおねえさんたちだからね!!」 「なんでわかってくれなかったの?そんなにれいむがきらいなの? れいむはおねえさんがだいすきだったんだよ!!」 「そのめはなんなのぉ!!わるいことしたってわかってるの!?」 「れいむはおしおきなんかしたくないんだよ!! どんなにあたまがわるくても、ゆっくりできなくても、 れいむはずっとおねえさんたちといっしょにいたかったよ!! それなのにおねえさんたちはれいむをうらぎったんだよ!!れいむのかなしみがわかってるのぉ!?」 私たちは一度も答えなかった。 「ゆゆっ!!みえてきたよ!!どすたちがいるよ………ゆゆゆっ!?」 ドスまりさを始め、群れのゆっくり達は全員が補縛されていた。 施設の使用人たちが数台の車やトラックで乗りつけており、 トラックの中に網でまとめて補縛されたゆっくりが次々と押し込められている。 すでにゆっくりオーラガスの効力は切れたらしく、 網の中のゆっくり達は口々に人間を罵っていた。 「だしなさいいぃぃ!!いなかものおぉぉぉ!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ひきょうなのぜ!!まりささまとしょうぶするんだぜぇぇ!!」 「かわいいれいむをここからだしてね!!だしてねえぇ!!」 見ると、ドスまりさは網ではなくロープで、横向きに板に固定されていた。 まだトラックに運び込まれていないが、帽子を奪われてなすすべなく泣き叫んでいる。 「おぼうしいいぃぃぃ!!どすのおぼうしかえしてねぇぇ!! おぼうしさんがないとゆっくりできないよおおおおぉぉぉぉ!!」 ドススパークを撃つのに必要な特殊なキノコも帽子の中なので、 帽子が奪われて固定された今、ドスまりさは無力だった。 「むきゅううぅぅぅ!はなしなさいいぃぃぃ!」 ドスまりさの傍らには、参謀役のぱちゅりーがやはり縛られている。 「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆ…………?」 「ゆゆゆっ!!たすけがきたよ!!れいむはゆっくりしないでたすけてねぇ!!」 「まりささまをたすけるんだぜ!!はやくするんだぜぇぇぇ!!」 「むきゅ!れいむ、むれをまもりなさい! むれのみらいはあなたにかかってるのよむきゅうううぅぅ!」 やってきたれいむ達に向かって、網の中のゆっくり達が一斉に助けを求めはじめた。 れいむ達は「ゆっ?ゆっ?」と鳴きながらおろおろと右往左往するばかりだった。 「例の十三匹はすでに車に乗せてあります」 「御苦労さま」 男たちの報告を受け、春奈が頷いた。 「群れは全て運び出しますか?」 「うーん、こんなにいらないかな。ドスとぱちゅ、あと五十匹ぐらいで、他はほっといていいよ」 「では、ドス達を。すでに五十匹以上集まってます」 指示していた春奈が、私に向かって聞いてきた。 「それはどうしようか?あたしはどっちでもいいけど」 春奈が指したのは、私のれいむだった。 れいむを連れて帰るのか。 ドスがいなくなったこの群れで、飼いならされたれいむが生き抜き、まして冬が越せるとは思えない。 放っていくことは殺すことと同義だろう。 しかし、今のれいむを私の家に迎え入れたいとはどうしても思えなかった。 善意からであれ、れいむがここで私にしたことを忘れ、水に流すことは私にはできなかった。 それでも、私は踏ん切りがつかず、対話を求めた。 「……れいむ」 「ゆゆゆっ!!」 トラックに運び込まれていく群れを呆然と眺めていたれいむが、 ぴょんっと軽快に跳ねてこちらを振り向き、満面の笑顔を浮かべて叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!」 「……え?」 何を言われたのか一瞬わからなかった。 「おねえさん!れいむおいたをしちゃったね!! ゆっくりごめんなさいだよ!れいむをおこってる?」 「………」 「ゆゆゆっ!!おこらないでね!!おこらないでね!! れいむにおしおきしてね!おしおきはつらいけどがまんするよ!! そしたられいむいいこになるからね!!」 「れいむ……」 「おねえさんがおこってるとれいむはかなしいよ!! れいむはんせいするからね!ゆっくりしていってね!!」 「あなたは悔しくないの!?」 「ゆゆゆっ!?」 私はれいむの前に膝をつき、助けを求め続けている群れを指差して叫んだ。 「これを見てなんとも思わないの!?」 「ゆゆっ!おこらないでね!おねえさんこわいよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「いいから聞きなさい!! あなたの群れでしょう!?このゆっくり達があなたの家族でしょう!? 家族を縛られて連れ去られて平気なの!?怒らないの!?」 「ゆゆゆっ!?きっとみんながわるいんだよ!! わるいことをしたからにんげんさんにおしおきされるんだね!! れいむもおいたしちゃったからおしおきがまんするよ!!」 「悪いことって何よ!? あなたたちが何をしたのよ!言ってみてよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむはわざとらしく、可愛い仕草で小首をかしげてゆんゆん鳴いた。 かつては、この仕草をされると私は怒る気が削がれてつい甘くなってしまったものだが、 今、その仕草は火に油を注ぐ効果しかなかった。 「ゆっ!ごめんなさい!れいむはゆっくりわからないよ!! れいむにおしえてね!ゆっくりがんばっておぼえるよ!!」 「私が大好きなんでしょう!? 好きだから!ここで!私を飼ってたんでしょ!? 私が群れの仲間になるためにしつけてたんでしょ!!?」 「ゆゆゆ!だいすきだよ!!れいむはおねえさんがだいすきだよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 れいむは突然にこにこして飛び跳ね始めた。 それが伝わっているなら安心だ、と思っているのだろうか。 「だから私を飼ってたんでしょ!?」 「ゆゆゆっ!?ちがうよ!おねえさんがれいむをかってるんだよ!! れいむはわかってるよ!ゆっへん!!」 「さっきまで言ってたことと全然違うじゃない!!」 またわざとらしく首を振り始めた。 眉を八の字に困らせ、もみあげで唇をつついて考えるふりをしている。 無知ゆえの過失ということにしてごまかそうとしているのは明白だった。 「ゆゆぅ~?れいむ、わからないよ? れいむ、なにかゆっくりできないことをいったの?おねえさん、おしえてね!」 「私を!ここで!飼うんでしょう!? 私たちをゆっくりの仲間にするんでしょう!!」 「ゆゆゆっ!!そんなこといったの!? きっとれいむはかんちがいをしてたんだよ!!れいむ、ゆっくりできないね!! ゆっくりできなくてごめんなさい! れいむがゆっくりできるいいこになれるように、れいむがわるいことしたらおしえてね!!」 かつて私が躾けた、人間に対する挨拶をれいむは繰り返し叫んだ。 私はそれから、れいむがやったことを一つ一つ並べ、どういうつもりだったのか問い詰めた。 私を穴に閉じ込め、どれだけ拒否しても雑草や虫を与えようとし、排便までさせたこと。 いじめられている長浜圭一を助けようとしなかったこと。 そして、私の娘を犯したこと。 しかし、まったく会話にならなかった。 私が何を言ってもれいむは空とぼけて、 「れいむはわからないからわるいところはゆっくりおしえてね!」を繰り返すばかりだった。 「ゆゆゆ~♪かわいくてごめんねっ♪」 ついには媚びはじめた。 「かわいくてごめんね」を繰り返し、小首をかしげてみせる。 この仕草が私は昔大好きだった。 こうすれば私の機嫌がよくなると、このれいむは知っていた。 ちらちらとこちらの表情を窺いながら、ひたすら無知を装い、媚び、へつらい、 こちらの怒りが逸れ、うやむやになって収まるのを期待して待っている。 なぜ私が怒っているのかという原因には、全く関心がないらしかった。 それは、かつて私が愛したゆっくりの姿だった。 躾の行き届いた、飼い主に愛らしさを振りまく、理想的なゆっくりだった。 このれいむだけではない、私がかつて世話した何百匹のゆっくりが、 根気強い躾の末に、こういうゆっくりになった。 しかしそれは、心底から礼儀作法を重要視しているのではなかった。 自分たちのほうが立場が強く、人間の言うことを聞かなくてもいい、 そんな状況になれば、あっさりと脱ぎ捨てられる程度の仮面でしかなかった。 立場が逆転したのを理解した今、このれいむは、あわててその仮面をかぶり直そうとしている。 私はそこでようやく、苦い事実を知った。 「あんたは………」 「ゆゆっ?」 「あんたは私と話すことなんかないわけね」 「ゆゆっ?おはなしするよ!れいむはおはなしがとくいなんだよ! どんなおはなしがしたいのかいってね!ゆっくりがんばるよ!!」 「命令を聞くだけなんだ……家族なんかじゃなかった……」 「ゆゆゆっ!そんなことないよ!れいむはおねえさんがだいすきだよ! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私が、生まれてから世話し、その死を看取った何百のゆっくり。 その中で、ただの一匹として、私に心を開いたゆっくりはいなかった。 私ひとりだけが空回りして、家族だと思っていたのだ。 ゆっくりにとっては、 「とにかく言う事を聞いてさえいれば世話してくれる便利な生き物」でしかなかったのに。 私は地面に突っ伏して泣いた。 「当たり前じゃん」 後ろで春奈が言っていた。 「人間の言う論理なんて、ゆっくりの価値観じゃぜんぜん理解できないの。 理解できない躾にハイハイ従うっていうのは、つまり強者への盲従で、思考停止だよ。 思考停止してる相手に、情も信頼もないでしょ」 続く
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都市型ゆっくり達の受難 作 キャベツ頭(仮称です。ハチの人から改称しました) ※すっきり描写&スカトロ描写注意(そこまでハードじゃないと思います) 都市に生きるゆっくりは、人間が出すゴミを食料源とする。 家庭のゴミをつめたビニール袋を破かれる側にしてみれば、 そうした行為は迷惑極まりないわけで、即座に対策が講じられた。 「ゆっ!!きょうもゆっくりさがそうね!!」 「「「ゆっくりさがすよ!!!」」」 ニワトリよりも甲高く、耳ざわりなコーラス。ゆっくりれいむの一家だ。 メロンサイズの親一匹に、リンゴサイズの子三匹。子は皆れいむ種である。 これからゴミ荒らしにかかろうというわけで、やる気満々である。 「ちびちゃんたち、ゆっくりがんばってね!おかあさんはここでみてるからね!!」 「「「ゆっくりがんばるよ!!!」」」 ふてぶてしい顔つきでどっしりと構える親れいむ。 どうやらゴミ荒らしが、野生における狩りに等しい行為となっているらしく、 子れいむたちは今日がその「狩り」デビューの時らしかった。 「まずは、じゃまな“あみ”をくぐってね!!でないとちかづけないよ!!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」 カラスよけの網をくぐって、ゴミ袋を食い荒らすと言うのが、 ゆっくりのやり方だった。そこで、第一の防波堤として、 特殊な素材で編み上げたネットが用いられた。 「ゆっくり、ゆっくり……ゆっ?」 勢い良く近づき、ネットをくぐろうとした一匹の子れいむ。 違和感をおぼえ、一歩飛びのいたが、既に遅かった。 その体には、格子状の切り込みが入り、うっすらと餡がにじみ出している。 「ゆぅああああああああ!!!いだいよおおおおおおおおおおお!!!」 「どぼじでええええええええええええ!!!!???」 素材としてピアノ線を用いたネットは、いともたやすく、 饅頭の体を切り裂いた。 ぱっくり、ぱっくりと幾つも傷口を開き、絶命する子れいむ。 「もうやだ!!おうちかえる!!!」 「ゆっ!!!まっで、いまがえっだら、ごはんがたべられないよ!!!」 この場を去るか否かで揉め始めた親子。 本当は子れいむたちの判断が正しかった。ここで第二の防衛システムが作動する。 「そんなにごはんがたべたいなら、おかあさんだけここにのこってよね!! れいむたちしにたくないよ!!」 「そうだよ!いじきたないおかあさんはゆっくりいつまでもここにいてね!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお!!!?……ゆぴぴっ!!!!!」 仲間割れした親子。そこに高圧の冷水が吹き付ける。 しつこく居座るゆっくりを退治するのと、 ネットにかかって死んだゆっくりを掃除する為の、洗浄用スプリンクラーだ。 強烈な水圧の為、触れるそばからゆっくりは粉みじんになっていく。 「あ゛ああああああ!!!!!!おがーざ いぴぴぴっ!!!」 「どぼじでえええええええええ べべべべ!!!!」 無残な餡塊となったゆっくり一家は水の流れに乗り、道路脇の排水溝へ一直線。 道路も綺麗に洗うことができて、一石二鳥である。 このおかげで、路上のゴミ袋を狙うゆっくりは絶えていなくなった。 「ゆぅ~これじゃ、まりさたちちっともゆっくりできないよ!!」 「れいむもおなかぺこぺこだよ!!ゆっくりごはんがたべたいよ!!」 不満を爆発させる、ゆっくりまりさとゆっくりれいむ夫婦。 数日前から降り続く雨と、人間の仕掛けたトラップのせいで、 いつものように餌を取りに行くことが出来ず、飢餓状態となっている。 ドブに突き出した家庭用の排水管にもぐり込んで、 命を永らえたのだが、もはや飢えと渇きは耐え難かった。 当然、排水管の中には、何の蓄えもない。 「ねぇれいむ、このなかをさがしてみようよ!」 「ゆぅ~、そうだね。おそとはあめさんがふってるからしかたないね…」 本来、暗くてじめじめした場所を好まないゆっくり。 デリケートなれいむは特にそうで、乗り気ではなさそうだが、 このままじっとしていても埒が明かない。 疲れた体に鞭打って、のろのろと排水管をさかのぼる二匹のまんじゅう。 「ゆっ!?まりさ、あかりがみえるよ!!」 「ほんとう!!?これでゆっくりできるね!!!」 「ゆぅ~、でもたかくてとどかないよ!!! これじゃぜんぜんゆっくりできないよ!!!!」 見上げれば確かに光が見えるが、ほぼ垂直に伸びる管。 これを登っていくのは、かなり骨が折れそうである。 「れいむ、ゆっくりとまりさがふみだいになるよ! そうすれば、くだにひっかかってよじのぼれそうだよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 まりさが下敷きになり、れいむがそこに飛び乗る。 饅頭にしては良く考えたもので、自らの体の特性を生かし、 ぎゅうぎゅう詰めの状態で、体を蠕動させることによって、 じわじわと管をのぼっていこうというのだ。 「ゆっくりのぼるよ!!」 のろまなれいむはまりさの助けを借りて、 まりさは自慢の跳躍で、うまく足がかりを得て、 二匹は順調に排水管をさかのぼってゆく。 体力のとぼしいれいむは、途中で何度も休息をとりつつ、 のぼり続けて、気が付けば管の出口にいた。 「まりさ、でぐちだよ!!れいむやったよ!!」 「ゆっくりいそいで、まりさもゆっくりさせてね!!」 まりさのくぐもった声。れいむはぶよぶよと体を動かし、 管から飛び出した。続いてまりさも、同じように飛び出る。 薄暗いその場所は、使われなくなった廃屋のトイレで、 その排水管は、和式の便器に繋がっていたのだった。 「ゆぅ~、やっとゆっくりできるね、れいむ!!」 「そうだね、まりさ!!やっぱりまりさはかしこいね!! れいむほれなおしちゃったよ!!」 「ゆぅ~ん、はずかしいよ…」 顔を赤らめ、恥じらいながらも、れいむの言葉に満更でもない様子のまりさ。 いつしか二個の饅頭は発情し、激しく体をこすり合わせ、 ぎとぎとした粘液にまみれている。 「んほおおおおおおおおおおおおおおお!!ばでぃざ!!!」 「きひいいいいいいいいいいいいいいい!!でいぶぅ!!!」 干上がった和式便器の中で愛を叫ぶ、つがいの饅頭。 そこに闖入する者があったが、二匹は気付く由もない。 「これ、お前さんたち」 「「んひひひひひひひひ、ほおおおおおおおおお」」 「これこれ」 「……ゆ゛っ゛!!!!???おじさんだれ!!!?」 「わしはこの家で雨宿りしているホームレスじゃ」 「れいむたちすっきりー!するんだからじゃましないでよね!!!」 「こりゃすまんすまん。しかし、雨で体が冷えて、催してきてのう」 「もよおす?もよおすってなあに?おいしいもの?」 「うーん、食ったことが無いからわからんのう。試してみるか?」 「「ゆっくりたべたいよ!!!」」 「よしよし。それじゃ、そこに座って待っておるんじゃ」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」 言うが早いか、尻をまくって突き出し、力みだす老人。 その様子に目を白黒させる二匹の饅頭だが、望みのものはすぐにやって来た。 「ゆっ!ゆっくりでてきたよ…」 「ゆっくりたべさせてね!!ゆっくりさせてね!!」 「こ、これはゆっくりできんほどの量じゃぞ…!!」 飛び出したのは、悪臭を放つ、暗褐色の巨大な塊だった。 それが、れいむの右顔面を直撃し、穿つ。 「ゆっくり、ゆっく…… づぶぶびびっ!!!」 「でいぶうううううううううううううう!!!」 恐るべき質量を持った、ゆっくり風に言えば、うんうんの塊は、 新幹線のような勢いで、れいむに激突した。 やわな饅頭が耐え切れるはずもなく、 れいむの顔面はいともたやすく吹き飛び、うんうんに混じってわからなくなった。 「ゆぎゃああああああああああああああああああ!!!!! いだいよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!おうぢがえる!!! いまずぐがえる!!!!!」 「でいぶ!!!!!!!!でいぶ!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「これはしばらく止まらんぞ!!東京から終点までノンストップじゃゾイ!」 便器にこんもりとしたうんうんの山ができあがり、 黒い新幹線はJR博多駅へ到着していた。 顔半分となったれいむは虫の息で、まりさもすっかりうんうんまみれである。 「いやあ、すっきりしたわい。おまえさんたち、味の方はどうじゃったかな?」 「ゆ……ゆっぐり…じねぇぇ……」 「……!…!…………!……」 まりさが悪態をつき、ハーフれいむがビクンビクンと痙攣して、 老人の言葉に答える。もはや、先は長くないだろう。 「よしよし。後は流して仕舞いじゃな」 その言葉とともに、老人が紐を引くと、赤さびた水が勢い良く噴射し、 すべてを押し流してゆく。幾度も紐を引いたので、 数分後には、すべてが綺麗に洗い流されていた。 「なんと、まだ水が出たとはのう。これで、わしもホームレス脱却じゃな」 つい先ほどまで、苦労してよじ登っていた管の中を、 ひどい臭いのする水とともに流されながら、まりさはひたすらに、 つがいのれいむのことを思っていた。 死ぬ前に、もう一度だけ、もう一度だけ「すっきりー!」をしたかった。 するはずだった。それが、すっきりしたのは、わけのわからないじじいだった。 目の前を、半分だけになったれいむが、うんうんとともに流れていく。 急速に近づく外の明かり。 まりさは、降り続く雨のことを思い出し、溶けはじめている体で、 なおも「どうしよう」などと考えたが、排水管から勢い良く飛び出して、 ドブの壁面に激突し、放射状の餡塊となった。 ほんの数秒前、同様の餡塊となったれいむの上に折り重なるようにして。 ドブに張り付いた、ふたつの饅頭。 しかし、その痕跡すら、後続の汚水が洗い流してしまうのだった。 このSSに感想を付ける
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現代モノです。子供が遊びの為に何の悪意も無くゆっくりをポイポイと使い捨てていく話です。 ====================================================================== ゆっくりドラッグ 最近男子小学生の間で注射器を使ったゆっくりドラッグが大流行している。 ゆっくりドラッグのもたらす快楽にとりつかれた男子小学生たちはみな注射器を持ち歩きゆっくりの捕獲に熱中した。 最初は誰もゆっくりがこんな快楽をもたらすとは考えてもいなかった。ゆっくりにはこんな使い道もあったのだ。 大人たちもこの大流行は知っていた。母親たちの一部にはこれを由々しき事態ととらえて禁止を訴えるものも居た。 しかし大抵は父親たちがそれをなだめて男子小学生たちのゆっくりドラッグを認めさせていた。父親達は口々に擁護する。 「男の子っていうのはこういう遊びを通じて大人になるんだよ」 「俺らが小さい頃はゆっくりは居なかったが似たような遊びはしてた」 「スリリングだし頭も使うしこれは教育にいい遊びだな」 「とにかくスカッとするよ。お前も一緒にどうだ?」 何がそんなに男たちを惹きつけるのだろうか?それは男子小学生達がゆっくりドラッグをやる様子を見れば一目瞭然である。 ここ湯栗市立南小学校でもゆっくりドラッグは大流行中だ。彼らがゆっくりドラッグをやる様子をちょっと観察してみよう。 「お~い、ゆっくりドラッグやろうぜ!いいの捕まえたんだよ」 『ゆっ!まりささまをどうするきなんだぜ』ぴょんっ ぴょんっ 「お~、イキも良いしジャンプ力あるなぁ。これ胴回りいくつ?」 「45センチだからライト・ミディアム級だな。お前持ってる?」 「いや~50センチだからギリギリでミディアムだわ」 「俺はいいぜ?このまりさならミディアムよりキテる」 「あぁ?俺のれいむなめてんのか?負けたらシッペだかんな!」 「お前が負けてもシッペだぞ!わかってんだろな!」 「おっしゃー!じゃあやるぞ!」 ひとしきり何やらバトルらしきものの前の煽りあいを済ませると少年達はニヤニヤしながらゆっくりを地面に置いて頭を押さえつけた。 『ゆっ!ゆぐっ!やめるんだぜ!』 『ゆっくりはなしてね!ゆっくりはなしてね!』 ゆっくりの文句には耳も貸さず彼らは集中力を高めて前方を見つめていた。 「あの木でいいな?」 「ちょっと遠くねえか?こっちの電信柱にしようよ」 「別に良いよ。じゃあ電信柱までな」 そして二人は左手でゆっくりを押さえつけ、右手に注射器を持ってカウントダウンを始めた 「3!2!1!・・・」 ゆっくりの尻に注射器が刺され、一気にラー油が注入された。 『『ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!!!』』 ゆっくりが子供達の左手の下で凄まじい痙攣を起こしている。彼らがホイールスピンと呼んでいる現象だ。 「「ゼロ!」」 二人が左手を離すとゆっくりはとてもゆっくりとは思えない凄まじいスピードで電信柱に向かって突進した。 『ゆぎゃぎゃぎゃ!・・・ぎゃぎゃ!・・・ぎゃ!・・・・ごふっ!!!!!!』ゴロゴロゴロ・・・ 『ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!!!』ぐしゃっ! 最初にリードしたのはれいむだったが突然失速し電信柱の1メートルほど手前で餡子を吐いて絶命してしまった。 絶命したままそこまでの勢いで少し転がったがゴール手前ギリギリ10センチ程で停止。 まりさは物凄い勢いで一気に電信柱に激突しその勢いで破裂して死んでしまった。まりさの勝ちである。 「イェーイ!勝った勝ったー!シッペな。お前シッペ!」 「くそ~、ぜってー勝てると思ったんだけどなぁ・・・」 負けた少年は悔しそうな顔をして腕を出すと勝者からのシッペを受けた。 そう、ゆっくりドラッグとはゆっくりを使ったドラッグレースの事である。 この「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃ!」という変わった悲鳴と凄まじい痙攣、そして断末魔の急加速はこの殺し方でないと得られない。 そしてそのスピード感と豪快さが子供達の心を魅了し一気に全国にブームが広がって行った。 子供達はそれぞれの地域ごとに独自のルールを作り、その中でレースを楽しんでいた。 そして子供から大人まで男というものは「高速化のためのカスタマイズ」というものが大好きだ。 この遊びも当然例外ではなくさまざまな工夫がされていた。 「しかしお前のれいむ速かったなぁ。ゴールまで生きてたら俺負けてたぜ。何か改造してるの?」 「してるよ。でも教えてやんない」 「教えてよ~。いやまじあの加速は尊敬した。お前改造の天才だな。」 「ん~?ん~・・・んふふ」 「俺のまりさも速かっただろ?あれ級のジャンプ力ある奴が多い場所見つけたんだよ。そこ教えてやるからさぁ」 「じゃ、じゃあ誰にも言うなよ。俺とお前しか知らないスペシャルカスタムだからな。」 「おう、ぜってーいわねえ!」 口止めの約束を取り付けた少年はポケットから秘密兵器を取り出した。 「これだよ。」 「ね、ねりワサビ・・・?」 「そう。これをラー油に溶かし込むとすげー加速力が増すんだよ。俺はニトロって呼んでる。」 「そっか!考えてみりゃワサビの方がツーンとくるからゆっくりにとっては痛みが強いんだな!」 「多分そうだろね。だから早く死んじゃうんだよ。今回もゴール前に死んじゃったし。」 「あ~、だから最初ゴールを遠い木にしようって言ったのに近い電信柱に変えたのか」 「そう。まだニトロをどれだけ混ぜるのかとか距離によってデータ集めが必要だね」 「んじゃ今からさっき約束した俺の秘密の狩り場でゆっくり沢山捕まえて実験しね?」 「いいね!ただこれチューブもう空っぽだから途中でスーパー寄ってこ。」 「オッケー。じゃあ出発!」 二人は自転車にまたがるとスーパーに向かった。 「調味料売り場・・・調味料売り場っと・・・あ、あった!ここだここだ」 「ハウスとS Bがあるね。どっちがいいんだろ?」 「ん~俺ハウスしか使った事ないな。ニトロのブランドによって加速力違うのかな?」 「ていうかよ、これ!ちょっと気にならね?」 「ハバ・・ネロ?・・・」 「これって確か世界で一番辛い唐辛子だってテレビで言って奴だよ」 「何か凄そうだな。でもこれ粉だから溶けにくくね?」 「良く振れば溶けるでしょ。ワサビとどっちがニトロ効果高いのかなぁ」 「両方とも買ってみてどっちが速いか調べてみようぜ」 「ハウスとS Bはどっちが速いんだろ?」 「ハバネロとワサビ比べてワサビの方が速かったらそれも調べよっか」 「いいね!最強のニトロラー油作ろうぜ!」 「おう!俺たち最強のレーシングチームだぜ!」 「負けねえ!最強!俺ら超はええ!」 「ぎゃはははは!」 男の子の会話というのは子供も大人も大差無いものである。 所変わってここは隣の北小学校の学区。 先ほどの彼らの通う南小学校は公団なども多く比較的低所得なエリアを学区にしてるのに対し、高台の北小学校には裕福な子が多い。 そしてここでもゆっくりドラッグは大流行していた。しかしやはりそこは金持ちの子。レースへのアプローチもかなり違う。 捕まえてきたほぼ同サイズの10数匹のゆっくりがひしめく箱を抱えた子供が帰宅した。 「ただいま~」 『ゆー!おうちかえる!もうおうちかえる!』 『だしてね!ここからゆっくりだしてね!』 『ゆえ~ん、せまいよ~、くるしいよ~』 『ゆっくりできないよ!ゆっくりさせて!』 少年は椅子に登るとアクリル板で囲いを作ったランニングマシーンの上でその箱をさかさまにし、囲いの中にゆっくりを落とした。 『ゆ~!いちゃい!』 そして少年は二つのスイッチを入れた。徐々に動き出すランニングマシーン。 『ゆゆ?ゆかがうごいてるよ』 『ゆっくりできないよ!ゆっくりさせて!』 『ふん!もうつかれたからねるんだぜ』 動き出す床を気にせずフテ寝しようとしたまりさが後ろに達したときバチバチッと閃光が走り一瞬にして丸焦げになってしまった。 『ゆぎゃああああ!!』 『ゆゆゆー!?なにがおこったの!?』 『ゆえ~ん!こわいよ~!』 「見て分かんねえのか?後ろの板には高圧電流が流れてるんだよ。ゆっくりしてたら死ぬぞ」 『ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!』 『だずげでぇぇぇぇ!!!じにだぐないぃぃぃぃぃ!!!』 のろのろと這っていたゆっくりたちは力の限りぴょんぴょんと跳ねだした。それを見て少年はマシンの速度を上げた。 『どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ!!!!!』 『づがれだああぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじだいぃぃぃぃ!!!』 『おうぢがえるぅぅぅ!!!おうぢがえるぅぅぅ!!!』 『も・・・もう・・ハァハァ・・・づがれだ・・・づがれ・・・ゆぎゃあああ!』バチバチッ 『ゆっぐり・・・ざぜで・・・ゆっぐり・・・・ハァハァ・・じだ・・ゆぎゃあああああ!!!』バチバチバチッ 基礎体力の無いものは最初の10分の定速運動で振り落とされた。ランニングマシンの後端にススがカサカサと動いている。 ここからがセレクションの本番である。ドラッグレースに必要なのは何よりもスピード。少年はグイグイ速度を上げていった。 『もう・・・はしれ・・・ない・・・・ゆぎゃあああああ!!!!』バチバチッ 『ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・じにだぐ・・・・な・・ゆぎゃあああ!!!!』バチバチバチッ 最後の3匹になった。今日のセレクションはこれで終了である。少年は速度を緩めた。 『おにいさん!きかいをとめてね!』 『これじゃゆっくりできないよ!』 「何言ってんだよ。鍛えなきゃ速くなれねえだろ。一晩中走ってろ馬鹿」 『ゆゆゆー!!!』 さすが金持ちである。カスタマイズにも金が掛かってる。 続く このSSに感想を付ける
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初日 「ゆっくりしていってね!!!」 最近、このような鳴き声をよく耳にする。 ゆっくりとか呼ばれるそれは、ここ数ヶ月で幻想郷のあちこちで見るようになった謎のナマモノだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 食用や愛玩用やストレス発散用、果ては性欲処理や衣料品にすら使われている。 種類によって特徴は異なるが、総じて知能は低く傍若無人。 「ゆっくりしていってね!!!」 甲高い声で常に大騒ぎする上田畑を荒らす事もあるので嫌っている人間も多い。 かくいう俺も、そんなゆっくりが大嫌いだ。 だがその理由は上記のものではない。知能が低かろうが大声で騒ごうが、そんな事は瑣末な問題だ。 「ゆっくりしていってね!!!」 俺が一番気に入らないのは奴らが常に他人に『ゆっくりする』事を要求している事だ。 全く気に入らない。生物か無生物かすらよく分からんようなナマモノの分際で人間様に命令するなんて。 そんな訳で野生のゆっくりをこの俺直々にゆっくりさせてやる事にした。何て親切なんだ俺。 「ゆっくりしていっt「ゆっくりしろぉ!!」 先程から散々騒いでいたそいつに、いきなり怒鳴り返してやる。 物凄く驚いたようで、目が白くなっている。歯茎まで見せ付けて気色悪いったらない。 「ゆっk「ゆっくりしろよぉ!!」 このように、人様にゆっくりさせようとする度にゆっくりさせ返す。 この必殺ゆっくり返しを続ければ、いくらクサレ脳味噌の奴らでもゆっくりしろ等とは言えなくなるだろう。 「y「だからゆっくりしろっつってんだろ!!」 ゆっくりブレインでも俺の鞭の愛を理解できたのか、壁の隅で感極まってブルブル震えている。涙まで流して、可愛い所あるじゃないか。 その日はもう喋らなかったので普段通り過ごす。 二日目 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくり達の朝は早い。日の出と共に起き、とりあえず寝ている奴を片っ端から怒鳴って起こす。 何とも不快な習性だ。目覚まし時計よろしく壁に叩き付けて粉砕してやろうかと思った。 だがいけない。今の俺は愛の調教師。自分がやっているのは悪い事なのだと、こいつに教えてやる使命がある。 「ゆっくりs「ゆっくりしろモーニング!!」 朝の挨拶と調教を兼ねた、我ながら素晴らしい文句だ。寝起きの頭脳は時々こういう奇跡を起こすから面白い。 朝食を食べる頃には、何故あんな間抜けな台詞に感動したのか自分でも理解に苦しんだが。 「ゆ゛っ……ぐい゛……じで……っでね!!!」 呆れた事にこいつは食事中(芽が伸びまくってしまったジャガイモ)もこの台詞を吐いていた。 何という傲慢さ。これは思った以上に手強い相手だ。 「ゲフゥッ…ゆっくりしていtっ「ゆっくりしろ!!」 また顔が固まっている。いちいち面白い顔をするのはいいが、本当に理解しているのか疑問だな。まぁ、何とかなるだろう。 今更ながら付け加えると、うちのお隣さんまでは徒歩二十分かかるので安心だ。聞かれたら流石にヤバいし。 その後も四回ほど怒鳴りつけてから仕事にかかる。今育てているのはトメィトゥだけだ。 俺は親が莫大な遺産を残してくれたおかげで、好きな野菜を栽培しまくるという農家的に最大級の贅沢ができている。 去年は畑一面スウィートポテイトゥ祭りだった。 奴ら三日周期で収穫できる上一個120Gで売れるからつい植えすぎて大変な事になるんだよな。ウハウハだけど。 それはともかく紐で目の届く所にゆっくりを縛り付けてお仕事お仕事。可愛いトメィトゥに愛情たっぷりだ。 日が傾く頃には作業も終わった。その間ゆっくりさせた回数実に四十五回。喉がいてえ。 ゆっくりの紐を解き、家に連れて帰る。流石に反省したのか、家に入ってもぼんやり虚空を見つめている。 自分の夕食を済ませてからエサを与え(畑に生えていた雑草ども)風呂に入れる事にする。 エサを食ったら反省が消し飛んだのか、反抗的な目でこちらを睨んでいる。 「どうしたんだゆっくり。風呂に入れてやるからさっさと来い」 「ゆっくりしていっt「ゆっくりしろよ!!」 もう何が何だか。固まってる隙に風呂場に運び、湯をかけて全身をたわしで洗い、湯船に放り込む。 ゆっくりは綺麗好きというのは本当だったようで、先程までの反抗的な目はどこかへ行き、泣きながら俺に感謝していた。 「ゆっく…ゆっぐりじでいっ「ゆっくりしろ!!」 「ゆくくっくりじd「ゆっくりしろ!!」 風呂が気持ちよくてはしゃいでいるのか何度も何度も怒鳴らせられる。まだまだ調教が足りないな。 百数えてから湯船から引っ張り上げ、水を入れて湯を冷ましてから浸かる。 風呂はいいなぁ。人間の生み出した文化の極みだよ全く。ゆっくりが感動のあまりゴロゴロ床を転がって呻くのも良く分かる。 三日目 小鳥の囀りと共に目が覚める。布団の中を見るとゆっくりは起きていた。 起きていても騒がないとは、どうやら調教が効いてきたようでほっとする。 またあの雑音で起こされたら今度こそ壁を汚しそうだったしな。 だが朝の挨拶は大事だ。とりあえずゆっくりさせてから着替えて朝食を摂る。 食後歯を磨きながらゆっくりのエサ(昨日切った爪と壁を這っていた女郎蜘蛛)を与える。 今までのような汚い食い方ではなく、静かにゆっくりと食べていた。調教の成果に満足する。 だがまた忘れてはいけないので、特に何も言わないゆっくりをゆっくりさせておく。 またゆっくりを縛り付けて仕事に入る。昨日と違って随分静かで良い事だ。一時間に一回ゆっくりさせておく。 仕事を終え、ゆっくりを解こうかと思っていると野生のゆっくりが俺のゆっくりの傍にいた。 「ゆっくりしていってね!!!」 「…………」 「ゆ?ゆっくりしていってね!!!」 「…………ゆぅ……」 追い払っても良かったが、調教具合を確かめたかったので事の成り行きを見守る事にする。 「ゆっゆ。ゆっくりしていってね!!!」 「…………」 その後も野生のゆっくりは何度もがなり立てていたが、すっかり更正した俺のゆっくりは殆ど反応しなかった。 やがて飽きたのか、野生のゆっくりは俺のゆっくりの顔に一度体当たりしてからどこかへ行った。 俺の所有物に手を出すとは全くもって許せんので、帰る前にそいつを捕らえて鍬で潰しておく。 紐を解いていると何やら言いたそうにこちらを見ていたが、先回りしてゆっくりさせるとまた虚空を見つめていた。 その日のゆっくりのエサは夕方潰したゆっくりだった。 意趣返しをした主の俺に涙を流して感謝しつつゆっくりと食事するゆっくり。そんなに感謝されると照れるぜ。 とりあえずゆっくりさせてからハイパー風呂タイム。 昨日は男らしいちょい熱めの風呂だったので今日は温めに湯を沸かす。 タワシで洗ってからゆっくりを湯船に入れてやり、俺も体を洗ってからゆっくりを上がらせ湯を沸かして入る。 ゆっくりは温めの湯も気に入ったようで、ガチガチブルブル震えて俺に目で感謝していた。中々殊勝なのでゆっくりさせてやった。 風呂から上がって床に就く。そういえば今日はこいつ一度もゆっくりさせようとしなかったな。良い事だ。 四日目 今日も静かなグッモーニン。今日も騒いで起こさなかったゆっくりを誉めてやろうと思い、布団をめくると。 ゆっくりは干からびて死んでいた。 慌ててもしょうがないのでいつものように食事を済ませて仕事をする。 午前中で仕事を切り上げるとゆっくり加工所に連れて行く。あそこは最近ちょっとしたゆっくりの怪我等も見るらしい。 「朝起きたらこんな物が転がっていたんです。一体何なんでしょうかこれは?ゆっくりなのは分かるんですが…」 「これはゆっくりの死骸のようですが…しかしこの様な死に方は初めて見ます。解剖して調べてみても宜しいですか?」 「ええ、勿論です。別にペットとかいう訳でもないですし」 「そうですか。では、大した額ではありませんがどうぞ」 「これは?」 「ほんの気持ちです。変わった死に方をしたゆっくりを標本として提供してくれた方にお支払いしています」 「そうなんですか。どうもありがとうございます。では私はこれで」 「ええ。またおいで下さい」 珍しい死に方とか言っていたが一体何なんだろうな。その内聞きに行くとするか。 家に帰ると、野生のゆっくりが数匹飛び掛ってきた。何だ何だ。俺はゆっくりに恨みを買うような覚えは無いが。 饅頭が飛び掛ってきた所で痛くも何とも無い。とりあえず全て踏み潰しておいた。 また一匹捕まえて調教しようかとも思ったが、これ以上やると喉を痛めそうなのでやめておく。 ゆっくりは肥料にもなるらしい。とりあえずよーく潰してから畑に撒く。 また仕事をして、夕食を食べ風呂に入って寝る。 ゆっくり調教生活も今日で終わりだ。お疲れ様でした俺。 後日聞いた話だが、何でもあのゆっくりの死因は『ゆっくり欠乏症』とか言うらしい。 何らかの原因で長期間ゆっくりできずにいるとああやって死ぬんだとか。 俺がもっとゆっくりさせてやればあいつは長生きできたのだろうか。 そんなどうでもいい事を考えながら、今日もトメィトゥ達に愛を注ぐ。 TOMATO END
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二作目です 前作?の設定を引き継いだシリーズ物とさせていただきます 虐待・・・してるかな? 人間はでてきません 幻想郷の中という設定です すっきりどころか原爆レベルのむかつきが残る恐れが・・・嫌な方はUターン ある日、風が少々強い日に・・・・ひとつのゆっくりの群れがまた一つ消えた。 不思議なことに、死体は一切なく、争った形跡すらなかった。 このような怪奇な事件が起こった経緯を説明するには一週間前に遡らなくてはならない 物語は、この群れに一匹の美アリスが迷い込んできたことから始まる。 美のゆっくり まりさはこの群れで育った、至って純真なゆっくりだった。 母親からはゆっくりがいかに素晴らしい生き物かを教えてもらい、 教わった次の日からさっそく虫さんにゆっくりの食糧になるという偉大な仕事を授けた。 まだ親離れしてない子ゆっくりであったが、群れのゆっくりからはとても将来有望なゆっくり とみなされていた。 そんなまりさが鼻歌を歌いながら散歩していると、一匹のアリスを見つけた。 アリスは気絶して道の真ん中で倒れていた。 まりさはアリスに駆け寄った。 「アリス!!大丈夫!?」 まりさはありすの体を揺さぶった。 揺すぶるとありすから声が聞こえ、ありすは意識を取り戻した。 まりさはありすの顔をみて驚いた。いままで見てきたゆっくりの中でもっとも美しかったからだ。 顔だけでなく、ありすからはとても良い匂いがしていた。 「うう~~ん、あら?都会派のありすったらこんなところで倒れちゃったわ」 ありすは少し体がふらつくのか、ふらつきながら喋った。 「ありすを介抱してくれたのはまりさ?」 「そ、そうだよ!!おなかがグーグー言っちゃってから倒れちゃったの?」 ありすは顔を赤らめながら恥ずかしそうに 「実はそうなのよ・・・都会派としたことが恥ずかしいわ!!」 か、かわいい!!まりさはそう思った。 まりさは、このありすに一目ぼれした。このありすともっと仲良くなりたい!! 「そ、それじゃあまりさのお家においでよ!!ご飯を御馳走するよ!!」 「ゆ~~ん、でも悪いわ・・」 「大丈夫だよ!!まりさのお家はご飯がたくさんあるからありすが食べても大丈夫だよ!!」 まりさの強烈ともいえるアピールに、ついにありすは折れたのか 「ゆ~~ん、そこまで言うなら御厄介になるわね!!」 ありすはまりさの招待に答えることにした。 まりさは喜びのあまり飛び跳ねた。 かくして、まりさはありすをお家に連れて行った。 群れにつくなり、群れのゆっくり達はアリスに群がり始めた。 いままで見た事もない程きれいな美ゆっくりだったからだ。 群がってくるのは未婚のゆっくりだけではなかった。 すでに所帯をもっているゆっくりもありすから匂う良い匂いに引き寄せられていった。 ありすがまりさのお家に着く頃には、お家の前にはゆっくりが群がっていた。 「む~しゃむ~しゃ・・幸せぇぇぇぇ!!!」 ありすはまりさのお家に案内してもらい、それからまりさの両親にご飯をもらっていた。 最初、ご飯をもらう事にまた抵抗をしていたが、我慢できなくなったのか おいしそうにむしゃむしゃ食べていた。 「ゆふ~~、ゆっくり御馳走様!!ご飯を分けてもらってありがとう!!」 「困った時はお互い様だよ!!ありすは旅ゆっくりなの?」 群れのゆっくり達はアリスの行動一つ一つに注目していた。 動く仕草、しゃべり方の一つ一つが群れゆっくりの心をがっちりと掴んでいたのだ。 「そうよ!!あてもなく彷徨って真実の都会派の愛を広めているの!!」 この言葉に群れゆっくり達はざわめき始めた。 まりさが本当の愛を教えてあげられるのだぜだの、れいむは普遍的な愛をあげられるだの ゆっくり達はしゃべり、アリスの気を引こうと頑張っている。 だが、アリスを見つけたまりさはアリスをできるものなら自分のお嫁さんにしたいと 考えていた。 「みんなうるさいよ!!ありすの声がよく聞こえないよ!!」 アリスを自分のお嫁さんにすべく周りのゆっくりを黙らせ始めた。 子ゆっくりなのに血気盛んというかなんというか・・・・。 「よかったらしばらくまりさのお家でゆっくりしていってよ!! いいでしょお母さん!!」 「いいわよ!!困った時はお互い様ですもの!!」 アリスは少し戸惑ったような顔をしたが、すぐに顔を笑顔にして 「じゃあ、しばらくご厄介になるわね!!」 まりさは喜びのあまり飛び跳ねた。 群れのゆっくり達も大喜びだった。残念そうな顔をいていたゆっくりもいたが。 妻がいるゆっくりは後に妻から説教されまくたそうな・・・。 それからの三日間はまりさにとって幸せだった。 何をするにもアリスと一緒に過ごしたからだ。 ご飯やお昼寝、遊ぶ時も一緒だった。とても幸せだった。 ただ群れの中を歩くと、いつの間にか群れゆっくりがありすにくっついてきたり ありすが昼ごろどこかにいっているという事以外本当に幸せだった。 まりさはそろそろいいかと思い、ありすに告白することにした。 晩、まりさはありすを群れの広場に招いた。 まりさは今までのゆん生の中で一番緊張していた。 「まりさ?ありすに何か用?」 ありすは待ち切れずにまりさに話しかけた。 まりさは緊張のあまり一瞬何もしゃべれなくなったが、勇気を振り絞って 頭を下げながら 「あ・・ありす!!まりさとずっと、ずぅぅぅぅぅっとゆっくりしようよ!!」 言った!!言えたよ!!あとはありすの返事を聞くだけだよ!! まりさはおそるおそる顔を上げた。 ありすはいつもと同じ笑顔で 「ごめんね!!ありすはずっとここでゆっくりしている訳にはいかないの ありすは都会派の真実の愛をつたえなきゃいけないの!! だからごめんね!!」 振られた・・・まりさはありすに振られたのだ。 いつもとなんら変わらない美しくていい匂いなのに・・・あまりにも辛い宣告を受けた。 まりさは涙を流しながら自分の家へ駆け出し、お布団さんで朝になるまで泣いていた。 翌日、そんなまりさの心中を察したのか、ありすは隣のちぇん一家の所で 御厄介になることになった。 親れいむが止めるのも制止して。 だが、これがまりさにとって幸運・・いや不幸だったかもしれない。 後に発覚することなのだが、朝まで泣いたことによって体内に侵入していた 毒素を洗い流すことができたのだ。 ありすが家を出て二日後・・・・ まりさが失意のあまりにふらふらあるいていると ありすは群れの広場にいた。なんでも真実の愛を伝えるための演説なんだそうな 「ゆ!!みんな都会派なありすのお話を聞いてね!!」 『ゆっくり聞くよ!!』 そこには群れの大人だけでなく、子供や赤ゆっくりがありすを中心にずらりと並んでいた。 群れの9割強といったところか・・・それだけのゆっくりがこんな真昼間に集まって ありすの演説を聞いていた。 ほとんどがありすといい関係になりたいと思って近寄ってきたゆっくりだった。 まりさはアリスの顔を見ると振られたショックが甦るからか、そそくさとその場を立ち去った。 「ありすはね!!あっちこっちを旅してきたから言えるわ、ここは本当のゆっくりプレイスじゃ ないわ!!ありすは本当のゆっくりプレイスをここに来る前に見つけたわ!! けど、一人でゆっくりするのは都会派がやることじゃないわ!! だから、アリスはお友達をいっぱいつれて一緒にゆっくりするのが都会派の愛と考えたわ!! だから・・・・・・・・」 まりさにはありすのしゃべっている内容が右から左へ抜けて行った。 まりさはありすの声をこれ以上聞いたら発狂するかもしれないとおもったのか 駆け足でお家に帰った。 それから二日後、ありすが来てから一週間 その晩、まりさは昨日のありすの演説でありすの魅力的な声のせいで 振られたことをふつふつと思いだし、泣きに泣き、朝になってようやく眠りに着き 太陽が真上に位置する時間帯になってようやく起きて気がついた だれもいなくなっていた・・・・。 群れのみんなだけじゃない、まりさのお友達、まりさを振ったありす、さらにはまりさのお母さんと妹達 みんながまりさを除いていなくなっていた。 「みんなぁぁぁぁぁ!!!かくれんぼならまりさもまぜてよぉぉぉぉ!!!!」 だが、そんな声に反応する声は一つもなかった。 みんながいなくなったことに泣いて下を向くと、まりさはあるものを見つけた。 「ゆ!!みんなの足跡だよ!!」 足もとに大量のゆっくりの足跡があった。 まりさは、この先にみんながいるのではないかと思い、足跡をたどることにした。 足跡を辿ること数時間 辺りは闇に包まれようとしていた。 まりさは途中で休憩したり、道端に生えている草を食べながら後を追っていた。 何度も何度もこけたり、何度も何度も泣いたが、みんながいないことの方がゆっくりできない と考え、必至に後を追った。 そして、まりさは群れのみんなが大きなお家に入っていく所を目撃した。 みんな無事のようだったが、ぶつぶつとなにか言っているようだった。 みんなを見つけたよ!!でも、様子がおかしかったよ・・・・ なにかいるかもしれないから慎重に行動するよ!! そう考え、まりさも別にあった小さな入口から大きなお家に入った。 その大きなお家の門には表札があった。汚い字で『しせつ』とかかれたところには 線が引かれ横に『ビッツ』とまだきれいな字が書かれていた。 まりさは中に入り辺りを見渡してみた。 建物の二階にあたる部屋には見張りと思わしきゆっくりがちらほら立っていた。 どのゆっくりも目がなにかおかしく、なにかぶつぶつ言っていた。 まりさはすぐにここがただのお家でない事に気づいた。 なにかおかしいよこのおうち!!いっぱいゆっくりがいるけど みんなようすがおかしいよ!! こんなところみんなとはやくでたいよ!! まりさは恐怖を覚えながらも、一歩ずつ、見つからないように移動した。 いつもの倍はゆっくり移動したこともあってか見つからずに監視の目をすり抜けることに成功した。 そして、目の前にある薄暗い部屋を調べるために足を踏み入れた。 だが、これが最大の失敗だった。 「ゆ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!!!ばやぐだじでぇぇぇぇ!!!」 「ばりざおねえじゃぁぁぁぁん!!たずげでぇぇぇぇぇ!!!」 「ぢ~~んぽぉぉぉぉぉぉ!!」 その部屋の壁には、ゆっくりが閉じ込められていた。 閉じ込められたゆっくりたちはまりさの姿を見るや否や、助けを求める声を上げた。 まりさはびっくりし、閉じ込められたゆっくり達を見るが群れのみんなは一匹もいなかった。 「おでがいじまず!!ばやぐだずげでぇぇぇぇ!!」 この大声がまずかった。 「ゆ!!侵入者だよ!!みんな!!ゆっくりつかまえるよ!!」 見つかった!!まずいと思ったまりさは部屋からでて、近くに転がっていた箱の中に隠れた。 しばらくすると、2匹のゆっくりが来た。 「ゆ~~~!!どこ行ったの!!ゆっくりでてきてね!!」 「いますぐ出てきたら一瞬でころしてやるんだぜ!!」 まりさはじっとこらえて、ゆっくり達が立ち去るのを待った 「ゆ!!ゆっくりしていってね」 声に反応しそうになりながらもこらえた。 「ゆ!!ここだぜ!!」 はったりにも引っかからないようにこらえた そしてしばらくすると、とてもおおきな声が聞こえてきた 『ゆ!!二階の全ゆっくりに告げるよ!!侵入者駆逐と試験のため、二分後にゆーれむをだすよ!! 死にたくなかったらはやく二階から離れてね!!』 ドスのものと思われる大きくて低い声に,群れのゆっくりたちは大慌てで階段に向かった。 まりさはゆっくり達が立ち去ったのを確認すると、箱の中から這い出てきた。 ゆーれむ?なにそれ?でも、なんかゆっくりできそうにないよ!! ここからはやく離れよう!! そう思い、階段に向かおうとしたが 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ちがう、ちがうよぉぉぉぉぉぉ!!!ゆぷぅぅぅぅ!!・・・」 「ばりざは侵入者さんじゃなぁぁぁぁぁぁ・・・・・」 さっきのゆっくりたちの声だ。 まりさは驚き、その場で立ち止まってしまった。 なにいまの?なにか来るの?こわいよぉぉぉぉ!!! まりさはおそるおそる階段の下を覗き込んで見た。 そこには・・・ 「な、なにあれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 まりさは思わず叫んでしまった。 それは無理のないことだ。 そこには、人型にくっつけられた5匹のゆっくりがさっきのゆっくり達を捕食していた。 足と手にあたる部分には赤れいむと赤まりさが1匹ずつくっつけられており、 胴体の部分には親と思わしきまりさが呪詛を呟きながらゆっくりを捕食していた。 足にあたる赤ゆっくりの体は上半身が完全に親に埋没しており、 親まりさはそれを巧みに使って二足歩行をしていた。器用なものだ。 皮で補強がされているのか、足の赤ゆっくりはつぶれることなく親と思わしきまりさの体重を 支えていた。 腕にあたる赤ゆっくりは足の部分が完全に親とくっついており、 口を使って捕食しているゆっくりを加えて持ち上げていた。 「で・・・でい・・・・ぶ・・・だずげ・・・で・・・・」 親まりさは捕食しながらここにはいない妻と思わしきれいむに助けを求めていた。 「おとうしゃん・・・・うえ・・に・・ゆきゅ・・り・・」 右手の赤れいむがしゃべる。 それが聞こえているのか、親まりさは二階に上がっていった。 ゆっくりと飛びはね、ついに二階にたどり着いた。 まりさはこの異形の化け物にただ恐怖した。 このゆっくり・・・なに!! ゆっくりを・・・食べてるよ・・・・ 怖いよ・・・怖いよお母さん!! まりさは対峙する前から恐怖で押しつぶされていた。 そんな時、ふとありすの顔がよぎった。 ありす・・・まりさを振っちゃったありす・・・・。 まりさは・・・・ありすに振られたのに・・・・ひどい振られ方をしたのに・・・ 今は・・・そんなありすを助けたい!! ありすには・・・幸せになってほしいよ!! ここで死ねないよ!!みんなを助けてみんなでゆっくりするよ!! まりさはくじけそうな心を奮い立たせ、異形のゆっくりと戦う覚悟を決めた。 「いっぱ・・・い・・ゆっきゅ・・り・・を・・たべりゅ・・と いたい・・いた・・い・・から・・きゃいほ・・うちゃれる・・・から たべりゃれて・・・ね・・」 右手のれいむの一言が戦いの開始のゴングとなった。 まりさは渾身の力をこめて、体当たりをした。 「ゆっくりくらってねぇぇぇぇぇぇ!!!」 だが、 「ゆぅぅぅぅぅ!!!」 跳ね返って逆に吹き飛ばされた。 この異形のゆっくりはゆっくりの皮10匹分を移植され、その分厚い皮が誇る 体は半端な攻撃を跳ね返してしまうのである。 そのため、ゆっくりの攻撃ごときでは跳ね返って吹き飛ばされるのであった。 余談だが、面での攻撃に強いだけで点での攻撃には弱く、木刀でも簡単に貫通してしまうのあった。 そんなことはしらないまりさは困惑していた。 自分の攻撃がきかないのである、無理もない。 「ゆ・・きゅ・・り・・・ちね」 困惑しているその刹那、異形ゆっくりの攻撃がきた。 その攻撃とは、右手にあたるゆっくりれいむにまりさを捕まえさせ、引きよせ 捕食するといったものだった。 これは先ほどの群れゆっくりにも使った戦法だった。 だが、これは相手が恐怖して委縮している最中に使うべき技であった。 本体ともいえる親まりさが実にゆっくりとした動きで右手を振りまわすためか かわすのは非常に簡単だったのだ。 まりさは攻撃が来る事を見抜き、後ろに素早く下がった。 異形ゆっくりの右手が空を切った。 まりさは出来た隙をついてさらに体当たりをした。 だが、半端な攻撃なのか、異形ゆっくりは苦痛に顔をゆがませるどころか 怯みもしなかった。 体当たりをしつづけるまりさに異形ゆっくりの右手が再び襲う。 だが、捕まったら最後とばかりにまりさは必死に避ける。 そんな戦いが20分続いた。 ただ右手を振りまわしている異形ゆっくりと、全身で動いているまりさとでは やはり体力の消費量に大きな差が出てきた。 まりさは必死に動き続けたこともあってか肩で息をしていたが、 異形ゆっくりはなんともないような顔でたっていた。 攻撃を避け、再び体当たりをかんこうするまりさ 「こ、こんどこそぉぉぉぉ・・・ゆ?」 まりさはこけた。体力の消費が圧倒的に多かったまりさはあんよがふとすべり・・こけたのだ。 うつ伏せになる形で横たわるまりさ。その隙を逃さず、異形ゆっくりを攻撃を仕掛けた。 「し・・・ね・・・」 まりさは右手のれいむに捕まった。 れいむのちからはゆっくりとは思えないほど強かった。おそらく口に何か仕込まれているのだろう。 胴体部の親まりさはこっち側に引き寄せ、左手のまりさで完全に動きを封じ、 捕食する気でいた。 まりさは焦っていた。このままじゃたべられちゃうぅぅぅぅ!!!と まりさは無我夢中で右手のれいむに噛みついた。 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」 右手のれいむが悲鳴をあげ、口を開けてしまった。 その隙にまりさは逃げ、距離をあけた。 あぶないところだったよ!!でも、おかげで弱点が分かったよ!! まりさは右手目掛けて駆け出し、噛みついた。 「ゆぴぃぃぃ!!」 「お、ちび・・・ちゃん?・・・」 胴体部の親まりさは右手のれいむの悲鳴に気づいた。 右手が攻撃されている事に気づいた親まりさは左手のまりさを振るった 「おち・・び・・ちゃん・・を・・・いじめる・・・な・・」 だが、右手のれいむと違って聴覚以外の機能が失われている左手のまりさは 親の言うことは理解できたが、どこに姉を虐めているわるいまりさがいるか分からなかった。 噛みついて相手の動きを封じようにも、どこにいるかわからず、口が空を切っていた。 「おとうしゃぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・あ・・あ・・・・」 まりさの力一杯の噛みつきが右手のれいむを完全に噛み殺した。 右のれいむがあのばけものの司令塔だよ!!あれをつぶしたらあのゆっくりは目を完全に失うよ!! まりさはそう考えていた。 結論からいえば正解だった。 この親子は別の実験にしようされ、その後「もっとゆっくりさせてあげるね!!」 という理由でこのようにくっつけられ、キノコなどの薬物の影響で完全にモンスターとなったのだ。 そのため、各個体はそれぞれ重度の障害があり、それが禍いしてか 目の役割ができたのは右手のれいむだけだった。 その目をつぶされたらどうなるのか・・・答えは簡単だ。 「おち・・・ちゃ・・ん・・・・ころ・・・すよ・・・ぜった・・・ころ・・・よ」 異形の本体部ともいえる親まりさは暴走し始めた。 今までの噛みつきから小さく飛び跳ねながらの跳躍で体当たりをしながら移動し始めた。 目を潰されたこともあってか、明後日の方向へ飛び跳ねている異形まりさ その隙を逃すまりさではなかった 「ゆっくり死ねぇぇぇぇ!!」 まりさは異形まりさの右手だったところに噛みついた。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」 赤れいむがくっついていたところ・・・そこは親まりさと赤れいむを密接にくっつけるために そこだけ皮がなかった。 まりさはそこめがけて噛みつき、親まりさの中に入って行った。 まだ子ゆっくりだからこそできた命がけの方法だった。 「がぁぁぁぁぁぁぁ・・・でい・・・ぶ・・おち・・・び・・ぢゃ・・・」 まりさが親まりさの餡子をぐちゃぐちゃにし、核を破壊したことで まりさはようやくあの世で待つれいむの元へ旅立った。 体についていた赤ゆっくり達も、核が親まりさに移植されていたのか、息絶えていた。 まりさは異形のゆっくりを撃退したことに安堵した。 だが、体力を限界近くまで使い、その場でへたり込んでしまった。 だれも来ないみたいだからここで一服だよ・・・ まりさは周りの安全を確認し、休憩に入った。 だが、そんなまりさを影で見るゆっくりがいた。 あの美アリスだった。 「ま・・・まりさ?」 まりさが声のする方へ体を向けると、そこにはありすがいた。 「ありす?・・・ありすぅぅぅぅぅぅ!!!」 まりさは疲れているのがまるで嘘であるかのように駆けだした。 ありすが無事だった!!本当によかった!! 「だいじょうぶ?なにか酷いことされてない?みんなは無事?」 「ええ、みんな大丈夫よ!!ありすだけ抜け出してこれから都会派な助けを呼びに行く所だったのよ!!」 よかった。みんな無事だ!! まりさは安心して顔で 「まりさはみんなを助けたいよ!!だからありす!!みんなはどこに捕まっているか 教えてね!!」 「もちろんよ!!こっちよ、ついてきてね!!」 まりさはありすの後ろについていくことになった。 だが、まりさはありすがなんとも邪悪な顔で笑っている事に浮かれるあまり気がつかなかった。 移動すること10分 ありすは警備のゆっくりがいない道を通ってきたかのように見張りがいない道を通って 大きな部屋にたどり着いた。 中はがらんとしており、奥に小さな小部屋の入口のような物があった。 「あの奥の部屋にみんな捕まっているわ!!早く助けてあげてね!!」 「ゆゆ!!分かったよ、みんな、今助けるよ!!」 まりさは駆け出した。 はやくみんなを助けだしてこんな所とおさらばだ!! だが、部屋に入るなり、まりさは横からの奇襲を受けることになった 「ち~~んっぽ!!」 ゆっくりみょんだった。 ゆっくりみょんがメスを加えて待ち構えていたのだ。 みょんはまりさを視界に収めるやいなや、メスを振い、足を刺した 「ゆぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 まりさは突然の痛みに悲鳴を上げた 「やれやれだみょん・・手間ををかけさせるなだみょん!!」 みょんは痛みに転がるまりさを上から見た。 まりさは待ち伏せをくらった事を悟り、必至に形勢を立て直そうとしたが、 「ちんぽぉぉ!!」 みょんによって身動きが取れないようにされた。 まりさは完全に気が動転していた。 ゆう~~、待ち伏せをくらったよ・・・このままじゃまりさやられちゃうよぉぉ・・・ ゆ!!このままじゃありすも危ないよ!!早く逃げるように言わないと ありすはさっきの所から一歩も動いていなかった いくらまりさを振ったありすでも死んでほしくなかったのだ。 「ありずぅぅぅぅ!!ばやぐにげでぇぇぇぇぇぇ!!」 だが、ありすは逃げようとするどころか、こっちへゆっくりと向かってきた まりさはさらに焦った 「ごっぢにぎじゃだべぇぇぇぇぇ!!!!」 だが、ありすは歩みを止めることなかった。 そしてみょんの前でとまった。 もう駄目だよ!!ありすが殺される!! まりさは最悪の未来を予想した。だが、最悪の未来は最悪な形で裏切られた。 「ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」 ありすは狂ったかのように笑いだした。 「ありす・・その下品な笑いは癪に障るんだみょん」 「あら、ごめんなさい!!都会派としたことがうっかりしちゃったわ でもね、こんなチビがまんまと騙されて・・ゆひゃひゃひゃひゃ!!」 まりさはありすの行動に理解をしかねた。 ありすはいったい何を言っているのだ? 「ありす?いったい何の事?ゆっくり説明してね!!」 まりさは痛みをこらえてありすに話しかけた。 するとありすは 「ぷっ・・・ゆひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」 さらに笑いだした。 「ゆひゃひゃひゃひゃ・・ありすを笑い殺すつもりなの? 呼吸困難・・・で・・ゆひゃひゃ・・死にそ・・・ゆひゃひゃ・・うよ」 「いっその事早くしんでほしいみょん・・・」 みょんはぼそっと愚痴をこぼした。だが、ありすには聞こえなかったらしく ありすは呼吸を整えて 「ゆーはーゆーは・・・しょうがないから教えてあげるわね・・・ まりさは・・ありすに騙されちゃったの!!」 「騙した・・・・まりさを!!」 まりさは困惑した 「そうよ!!本当ならあの馬鹿な群れゆっくりと同じようにありすのフェロモンで 虜にして木偶にするつもりだったんだけど、なんで解けちゃうかな~~? やっぱりパチュリーの薬なんてでたらめだったんだわ、都会派でも怒るわよ!! でもまあいいわ、おかげで都会派なショーがたのしめたわ!!」 「何を言ってるの!!まりさに何をしようとしたの!!」 まりさは怒った。 「教えてあげるわね!!まりさはありすの美貌とパチュリーからもらったありすの フェロモンの匂いを嗅いだ真の都会派にしてもっとも美しい美のゆっくり、 ありすにメロメロになっていたのよ!! 群れのゆっくり共には効いていたのに、なんでこんなビチクソだけきかなかったのかなぁ~? まあいいわ、陰険な事は陰険なパチュリーや頭がいかれたれいむにまかせるわ!! ありすはこの美貌でばかなゆっくり達をこの天国とやらに招待するだけだから ゆひゃひゃひゃひゃ!!」 まりさはこのありすの正体に気づいた。 このありすは、みんなをたぶらかしてこんなゆっくりできない所へ連れてきて みんなをゆっくりさせないつもりなんだね!! なにが美のゆっくりだよ!!とんだゲスじゃないか!! まりさがありすを睨めつけていると、後ろからゆっくりれいむが現れた 「ありす!!このおちびちゃん?」 「そうよ。じゃあれいむ、このおちびちゃんをゆっくり調べてとてもゆっくりできる体とやらに させてあげてね!!」 「もちろんだよ!!おちびちゃんはとてもゆっくりできるようになるから安心してね 心配しなくてもいいよ!!ここ最近あまり失敗してないから あ、そうだ!!みょんも見て行くといいよ。とてもゆっくりしたいからこの最高の ゆっくりプレイスに来たんでしょ!!」 「・・・みょんは悪趣味な方法でゆっくりしたくないからゆっくり失礼するよ」 「ゆ!!分かったよ!!じゃあ行こうねおちびちゃん!!」 そういうと後ろかられいくの側近と思わしきゆっくりが数匹出てきた。 ゆっくり達はまりさを小部屋の中にあった台の上に置いた。 まりさは小部屋から出ようとするありすに恨みの言葉をぶつけた 「ごのビチグゾがぁぁぁぁぁぁ!!!おばえなんが汚物をあびでじねぇぇぇぇぇぇ!! 汚物をぶちまけられでじぬばでぐるじめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 ありすは罵声を自分への称賛のように受取って部屋を出た。 その晩、その部屋からはゆっくりまりさの悲鳴が止まなかった・・・・。 エピローグ ドスはありすから成果の程を聞いていた。 足りなくなった実験体の材料の足しにするためありすに頼んだが、予想以上の結果を残してくれた。 ドスは満面の笑みで 「ゆっくり御苦労さまだよ!!これだけいっぱいゆっくりがいたら準備や研究もはかどるよ!!」 「ええ、それはもちろんよ!!それが都会派なのよ」 ありすは続けた 「ところでドス、分かっていると思うけどありすが協力するための報酬も忘れないでね!! わすれるなんて都会派じゃないわ!!」 「分かっているよ!!永遠の命と永遠の美貌だね!!ゆっくり正しい世界になったら ゆっくりに出来ないことはなくなるからね!! ゆっくりできなくなったゆっくりを蘇らせたり、ゆっくりに永遠の命や若さを得るなんて 朝飯前だよ!!本来なら、世界はゆっくりに仕えるべき存在なんだから!!」 ありすはよしよしといった顔でうなずいた 「ところであの陰険なれいむが作ったあのゆーれむかしら?あれてんで弱かったんだけど 本当につかえるの?」 「れいむも言っていたんだけど、あれはプロトタイプで本来なら健全な親ゆっくりと 子供のゆっくり5匹を使うものなんだけど、別の実験で使ってボロボロ親子を使ったから あれだけ弱かったんだね!!それでも、部下のゆっくりを食い殺したから十分に使えるよ!! 数は大丈夫だよ!!ありすが連れてきてくれたゆっくり達でゆーれむをたくさん作るから」 ふ~ん、とありすは考えた。 もう聞きたいことは聞き終えたのでありすは立ち去ろうとした。 「あ、ありす!!そのお香とても効果があったでしょ!! あとでパチュリーにもお礼をいっておいてね!!」 「ゆ~~ん、まあ全く役に立たなかった訳ではなかったから後で礼くらいは言っておいてやるわ!! ところで肝心のパチュリーは?」 「パチュリーなら新しいお薬の実験に出かけたよ!! ありす・・・・正しい世界に戻して、みんなでゆっくりしようね!!」 ありすはなにも言うことなくその場を立ち去った。 いままで薄汚い所にいたのだ・・・はやくカスタード風呂に入って美しくならないと ありすは自然と自分の部屋へ駆け出していた。 あとがき 地雷どころか原爆だよ・・・・これ・・・ まあいいか。 あ、ところで名前ですがこれから『ゆっくりAVENGER』と名乗ろうと考えています。 またこのシリーズですが、最後の最後にすっきりするような作品にする予定です。 バッシングの嵐になるかもしれませんが、ご付き合いください。 なお、あまりにイライラして眠れないという方はご自由にご自分の作品とクロスして やりたい放題してもらっても構いません 作品一覧 死のゆっくり このSSに感想をつける
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※ 作者名:天海 ※ 時代考証とか世界観とか、その他色々と気にしない方向でお願いします。 年越しの準備をあらかた終えて日常の落ち着きを取り戻した小さな村落に、地響きが鳴り渡った。 「来おったか……」 村の長老は極めて冷静にそうつぶやいた。 ドスまりさと多数のゆっくり達の襲来を まるで予想していたかのように。 この地方は冬でも雪が降る事は稀であり、この辺りに住むゆっくり達は冬籠りという物をする必要がなかった。 もちろん外は寒いし、食糧となる虫や植物も無いため、巣に籠りがちになるのは変わらないのであるが。 とはいえ、少なくとも巣に籠っている間に食糧が尽きたまま泣き寝入りしたり、積もった雪で出口が防がれたりという事もない。 ゆっくり達にとっては冬でも比較的安全である場所なのである。 ドスまりさは村の広場に辿りつくと、早々に長老へと切り出した。 「まりさのむれは たべものがたりなくてこまってるんだよ。だから たべものをわけてほしいよ。どうかおねがいします。」 無理を招致で言っているのであろう。ドスまりさのトーンはゆっくりとは思えないほどに低かった。 そう、ドスまりさにもわかっているのだ。 毎年、草原には群れの皆だけでは食べ切れないほどの植物が生い茂げるのに、この年に限って植物は異様なほどに少なかった。 村落の畑の方も 人の手が入っているとはいえ、そう思わしい収穫は得られなかったであろう。 それでも仲間のゆっくり達を幸せにしないといけないという使命感から、ドスまりさは今回の行動に出たのだ。 ……ドスまりさはゆっくり側の被害を覚悟の上でも、人間と戦って食糧を得るという覚悟を決めていたのである。 その証拠が、ドスまりさの後ろに並び立つ100を超える数のゆっくり達である。 とは言っても、人間は強い。 ドスまりさはさておき、普通のゆっくりでは束でかかっても人間に敵うわけがない。 そこでドスまりさは一策を講じていたのである。 ここにいるゆっくり達は いわば囮。 これだけの数のゆっくりがいれば、対応する人間側も それなりに人員を割く必要がでてくるであろう。 人間達が広場に集まったところで、ドスまりさがゆっくりオーラを発動させる。 その隙に別動隊が人間の食糧庫から食糧を奪おうという作戦であった。 人間達には食糧を長期間保存する技術がある。 また、長距離を移動する術や、隣村へのツテもある。 多少の食糧が無くなっても、強い人間達ならなんとでもできるはずなのだ。 さらにいえば、この村の人間達は過去一度たりとも、ゆっくりの群れに手出しをしてきたことがない。 そのような経験もまた、今回のドスまりさの決断を手伝ったのである。 そして、こんなことを考えてはいけないが……もし人間が今回に限って怒りを見せた場合、 囮となるゆっくり達、そしてドスまりさ自身の事を食糧の替わりに人間に食べてもらっても良いとすら、ドスまりさは考えていた。 人間達の怒りを、それで鎮められるのであれば。 ゆっくりの共食いはタブー。それを一度でも崩してしまえば群れの存続はありえないであろう。 人間にゆっくりを差し出して替わりに野菜をもらうという悪魔の考えも思い浮かんだのだが、これをしては他のゆっくり達の信用を失う。 それでは結局群れの存続はありえない。 だが、戦って食われるなら仕方ない。 結局数体のゆっくりが食われて、替わりに野菜を得るという結果は変わらないが、過程の違いが群れの存続には重要なのである。 「残念ながら聞けぬ相談だ。こちらも苦しいのでな。」 長老の返答は、ドスまりさの予想した物だった。 「だったら」「力づくか……? それもよかろう」 実力行使を示唆するドスまりさの言葉を遮った長老はさらに続ける。 「ただし、互いに損害は最少に留めるべきだろう?」 「……ゆゆ?」 予想とは違う展開にドスまりさは戸惑う。 「1vs1。人間とお前で決着をつけ、お前が勝てば食糧をやろう。お前が負ければ、おとなしく帰るんだ。我らは何も奪わぬ。」 「……ゆゆゆ?」 これはゆっくり達にとっては、予想よりも遥かに美味しい提案ではないのか。ドスまりさはさらに戸惑う。 ドスまりさは、このような美味しすぎる提案に諸手をあげて喜べるほどの餡子脳ではないのだ。そもそも手がないし。 「ただし、ルールはこちらで決めさせてもらう。それに納得が行かなければ他の方法でくるがいい。」長老はそう付け加えた。 やはりきたか、とドスまりさは思う。人間の考える事には何か裏があるのだ。とはいえ、ルールを確認だけしてみる価値はある。 ドスまりさはさらに詳細を聞く体勢に入った。 長老の示したルールは以下のような物であった。 ドスまりさと人間の1vs1で決着をつける。他の人間及びゆっくりの手出しは禁止する。 両者とも、互いの同族を人質及びゆっくり質にとることを禁止とする。 場所は広場に特設した7m四方のリング。場外への脱出は試合放棄とみなし、反則負けとする。また、相手を故意にリング外に落とすことも禁止する。 人間はオープンフィンガーグローブ、マウスピース、ファウルカップ、レガースの着用を義務づける。その他のあらゆる道具は使用禁止とする。 人間はドスまりさへの目つぶし攻撃、口内への侵入、帽子への攻撃は禁止とする。 人間はドスまりさへの噛みつき攻撃及び食すことを禁止とする。 ドスまりさは人間を口内へ含むこと、食すことを禁止とする。 ドスまりさは故意に自らの帽子を落とすことを禁止とする。 ドスまりさはあらゆるキノコの使用を禁止とする。 両者、故意での急所攻撃を禁止とする。 軽度の出血あるいは出餡をした場合は、傷を塞ぐ応急処置を施して試合を続行する。その他の場合の応急処置等は一切認めない。 1ラウンド内に3度ノックダウンを奪われた場合、その時点でTKO負けとする。 その他、レフェリーの判断により試合続行不可能な状態と認められた時点で、レフェリーストップとして試合を終了する。 3分間3ラウンドで戦い、それでも決着がつかない場合はジャッジによる判定で決着をつける。 「ゆゆ〜……」 ドスまりさは熟考した。 このルールは思いの他、ドスまりさの事も考えて作られている。 ただ一点、キノコの使用禁止が気にならないではないが、人間と1vs1で戦うのであれば、このくらいのハンデは仕方ないであろう。 このドスまりさは体長2mほど。帽子を含めればさらに高くなるが、ドスまりさ種としては比較的小さい、若いドスまりさであった。 一方この村落の人間達の中に、見たところ自分より大きい人間はいない。 さらにルールで自らの身も、仲間のゆっくり達の身も安全を確保されており、思う存分戦うことができるのである。 そして万が一人間側が何かを仕掛けてきても、長老は何も奪わないと公言したではないか。 「ゆゆ! わかった! やるよ!」 ドスまりさは決断した。 「……そうか。 では日時と場所は、本日夕刻からこの広場で。 準備ができるまでここでゆっくりしてるがいい。」 そう言った長老は、村の者達にリングの準備と、ゆっくり達へのもてなしを命じた。 夕刻。 組みあがったリングの周りに設けられた観客席は、小規模ながらも村の者たちでびっしりと詰められていた。 一方向は特設ゆっくり応援シートとなっており、ドスまりさが連れてきたゆっくり達と別動隊のゆっくり達が雛壇にびっちりと詰められていた。 なかなか珍妙な光景である。 10カウントゴングが鳴り、会場の照明が灯る。 「皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、試合を開始いたします!」 場内に響くアナウンスは、おあずけ状態だった観客たちのボルテージを一瞬にして最高点まで上昇させた。 「それでは、青コーナーより、ゆっくり代表選手の入場です!」 「「「 どすー、ゆっくりさせてねー 」」」 「やっさっいっ!やっさっい!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」 特設ゆっくり応援シートのゆっくり達から、一斉に声援(?)が飛ぶ。 花道に焚かれるスモーク。その中に巨大な影が現れた。 それと同時に会場に響くのは、女性声の入場コール。 「インザブルゥゥゥゥーコォナァァァー!、 フロォム、チカクノソウゲェン、 ドォスゥゥ、マ、ルィッスァァァ!!」 「その巨大な背中に背負うのは、幾多のゆっくり達の願い……ゆっくりしたい、ゆっくりさせたい、必ずゆっくりさせてやる! 絶対ゆー者、ドスまりさ入場!」 実況席の言葉に、応援シートのゆっくり達がさらなる盛り上がりを見せる。 ドスまりさはリングの前まで小刻みに跳ねていき、そこから高々とジャンプしてリングへと着地する。 その際の衝撃音が、村の者達の不安を駆り立て、ゆっくり達の高揚を呼ぶ。 ドスなら自分達をゆっくりさせてくれる。ドスまりさに人間が勝てるわけがない。 ゆーゆーとリングに着地したドスまりさは、応援シートのゆっくり達の方へ向き気合をいれる。 「「「「『 ゆっくりしていってね! 』」」」」 ドスまりさとゆっくり達の、ゆっくりしていってね大合唱である。 さらにドスまりさは本部席にいるゆっくりれいむを見やる。 このれいむは試合に決着がつかなかった場合のジャッジ役の一人に選ばれたゆっくりであり、ドスまりさの愛するゆっくりでもあった。 ドスまりさは愛しのれいむにウインクをしてみせる。頬を赤らめるジャッジ役のれいむ。 この試合が終わったらいよいよ婚約を申し込もう、そう心に決めて試合への決意をさらに高めるドスまりさであった。 ちなみにジャッジは計3人。 不公平にならないように、ドスまりさの承認も得た上で以下のメンバーにジャッジを任せることにした。 村の代表として長老を、ゆっくりの代表としてれいむを、そして中立の立場として村から離れた場所に住んでいる一人の少女を。 レフェリーはその役割の都合上 村の者になるが、ドスまりさの参謀のぱちゅりーとありすをセコンドに置き、何か不平があればレフェリーに抗議できる権利を与えることでゆっくり側の了解を得た。 再び、アナウンスの声が場内に響き渡る。 「つづいて、赤コーナーより、人間代表選手の入場です!」 「「「 にんげんさん、ゆっくりしていってね! 」」」 「どぼぢでれいむのぶんのおべんとうたべぢゃったのぉぉ?」 「ゆゆ、こんなところにのこしておく れいむがわるいんだぜ!」 特設ゆっくり応援シートのゆっくり達から、一斉に野次(?)が飛ぶ。 花道に焚かれるスモーク。その中に人影が現れた。 それと同時に会場に響くのは、やはり女性声の入場コール。 「インザルェッドォーコォナァァァー!、 フロォム、ココノムラ、 ギャクゥタァァイ、オ、ニィッスァァァンッ!!」 「道具など要らない、仲間など要らない、ゆっくりさえいればそれでいい! その虐待魂は地獄の閻魔にも止められはしない! 虐待お兄さん入場!」 実況席の言葉に、今度は村の者達の盛り上がりが最高潮となる。 花道に姿を現した虐待お兄さんは一目散にリングへと駆け、リングインすると同時にドスまりさの目前に立ち、ドスまりさと頭を合わせて睨みつけ続ける。 慌てて両者の間に割って入り、なだめるレフェリー。 両者のボディチェックを終え、少しだけ間を計って、レフェリーが試合開始の合図を送る。 同時に会場にゴングの音が鳴り響いた。 第1ラウンド序盤は静かな立ち上がりとなった。 ドスまりさとの間合いを慎重に測る虐待お兄さん。 虐待お兄さんの出方を窺うドスまりさ。 互いが互いを牽制し、両者とも攻撃らしい攻撃をせずに、ただ時間だけが過ぎ去っていく。 そんな展開を観客席の人間、そしてゆっくり達はじっと見つめていた。 突如、マットを強く蹴る音が会場の静けさを打ち破る。 先手を打ったのは虐待お兄さん。 一瞬の踏み込みから、ムチのようにしなるローキック。乾いた打撃音が響きわたる。 そしてすぐさま、元の間合いに下がる虐待お兄さん。 観客席からは一斉にどよめきの声が漏れだした。 虐待お兄さんのローキックは、確かにドスまりさの顎の側面にクリーンヒットした。 クリーンヒットしたのだが…… 「ゆふん、ぜんぜんいたくないよ!」 ドスまりさにはまったく効いていなかった。 ローキックは一見地味な技ではあるが、威力は回し蹴りの中でも高い部類であるはずだ。 そして打つ際の隙の少なさという利点もある。 どこを蹴ってもそう違いが無いであろうドスまりさ相手には、もっとも適した打撃であることは確かであった。 ……が、それが欠片も効く様子が無い。 ただでさえ中身が餡子である。皮さえ破れなければ、ゆっくり種は打撃には強いはずなのだ。 その様子を見たセコンドのぱちゅりーとありす、ジャッジれいむ、そして応援シートのゆっくり達はドスまりさの勝利を確信した。 そもそも体格的にはドスまりさが圧倒的に勝っているのである。 何度打撃を打たれようとも、ルール的に人間はそれ以上のことはできないはずである。 その打撃が効かないとあれば、あとは一度でもドスまりさが踏みつけ、あるいはのしかかり等を決めれば、ドスまりさは勝てるのだ。 虐待お兄さんはしかし、その事に動じる様子は無かった。ただ、冷静な視線でドスまりさの動きを見つめている。 その様子を見て、長老はうなずく。頼もしい青年に育ったものだ、と心の中で青年の成長を喜んでいた。 この虐待お兄さんは、元々孤児であった。 孤児であるが故のストレスを発散するかのように、ゆっくり達を むやみに傷つける生活を送っていた。 それを知った長老が少年を家族として受け入れ、そして諭し、格闘技に打ち込むように促したのである。 試合は進む。 虐待お兄さんはヒット&アウェイの要領でローキックを放ち続けていた。 しかしそのどれもが、目に見えたダメージをドスまりさに与えるには至らない。 ドスまりさは余裕の表情で、じりじりと虐待お兄さんへ近づくように動くだけである。 虐待お兄さんの身体からは汗が噴き出していた。 仮にも格闘技に打ち込んできた虐待お兄さん。スタミナ面ではなんの不安も無いはずなのである。 しかし、リング上での実戦となると、今回が初めてなのだ。この村にそのような機会はそうそう無いのだから。 リングを照らす照明が冬の屋外とは思えぬほどの温度を生み出していた。 不慣れな環境での戦いが、虐待お兄さんのスタミナを奪っていたのかもしれない。 第1ラウンド残り1分のあたりで、アクシデントは起こった。 虐待お兄さんがローキック後に後方へ下がる際に、自らの汗が溜まっていた場所で足を滑らせてしまったのである。 虐待お兄さんが仰向けにスリップダウンすると、ドスまりさはすかさず間合いをつめ、虐待お兄さんへとのしかかった。 観客の人間達からは悲鳴が、ゆっくり達からは大歓声が起こる。 ドスまりさは完全に虐待お兄さんの上にのしかかり、観客からは虐待お兄さんの姿を確認することができなくなってしまった。 ドスまりさの重量は定かではない。ただ、恐らくは人間でいう百貫デブなどとは比べ物にならない重さであろう。 さらに完全にドスまりさとリングの間に挟まれている状態で、窒息状態に陥っているかもしれない。 ともすれば、レフェリーストップ負けになる恐れもあるのだ。 レフェリーはしきりにドスまりさの下を確認する。しかし虐待お兄さんの姿は見えない。 第1ラウンド終了まではもう少し時間が残っている。ゴングに救われる可能性を期待するのは厳しい状態だ。 ドスまりさは鎮座する。虐待お兄さんの真上で、不適な笑みをうかべながら。 「まりさ〜、すてきよ〜」 ジャッジれいむが、ドスまりさの不適な笑みに思わず声援を送る。 公平さの欠片も見られないが、ゆっくり種にそんな物を求めるだけ無駄である。 「まっててね、もうちょっとでおわるからね!」 ドスまりさはリングから声をかける。 すでに勝った気でいるゆっくり達を横目に、村の者達と長老は冷静に試合を見守っていた。 「……ゆ?」 ドスまりさが声を漏らす。何か自分の体の下部に違和感を感じたのだ。 次の瞬間、ドスまりさの体が横方向に傾く。「ゆゆゆ!?」 ごろん、と横方向に1/4回転したところで、しばし姿の見えなかった虐待お兄さんが姿を現す。 虐待お兄さんの両腕は、ドスまりさの下部をつねってひっぱった状態で、両足はその根元を固定しているようにカニ挟みの状態になっていた。 おそらくその部分でのテコの原理を利用して、相手を回転させたのであろう。 いわば、対ゆっくり用のオモプラッタである。虐待お兄さんの攻撃手段は、何も打撃だけというわけではないのだ! 横たわるようにひっくり返ってしまったドスまりさから手を放し、虐待お兄さんは立ち上がった。 セコンド、及び応援シートのゆっくり達は一体何が起こったのかわからず、一様に呆けた表情を見せている。 虐待お兄さんはそんな事もかまわず、ドスまりさの底部にあたる部分に、今度はミドルキックの連打を浴びせ続けた。 ドスまりさが動けない状態である以上、ヒット&アウェイに徹する必要は無くなったのである。 第1ラウンド終了まではもう少し時間が残っている。ゴングに救われるまで、ドスまりさはひたすら底部を蹴られ続ける羽目となった。 第1ラウンド終了のゴングが鳴る。 虐待お兄さんは赤コーナーに戻り、用意された椅子に腰を掛け、タオルを頭からかぶり、水を口に含み、そして吐き出した。 スタッフ達がドスまりさの体躯を立たせてやり、青コーナーまで戻す。 セコンドのぱちゅりーとありすは声をかける。 「むきゅ、さいごはやられたわね、つぎのちゃんすがあったら、じゃんぷしてふみつけるのよ!」 攻撃のアドバイスを施すぱちゅりー。 「あんなてくをもっているなんて、あいてはなかなかのとかいはね! きをつけて!」 防御のアドバイスを施すありす。 その言葉にうなずくドスまりさ。アドバイスとして役に立つのかは疑問であるが、人間には推し量ることができない所なのであろう。 そうこうしているうちに、インターバルは終了し、第2ラウンド開始のゴングが鳴り響く。 第2ラウンド開始直後から、虐待お兄さんは再びローキックでのヒット&アウェイ作戦に出た。 ドスまりさはそれを気にせず、ひたすら虐待お兄さんとの間合いをじわじわと詰めるだけである。 だけであるのだが…… おかしい。先ほどよりも間合いを詰めることができない気がする。 インターバルの休憩で虐待お兄さんのスタミナが回復したせいかもしれない。 またリング上の汗が拭きとられたことで、虐待お兄さんが動きやすくなったのかもしれない。 ドスまりさは考える。 今の素早い動きの虐待お兄さんにジャンプ踏みつけを決めることができるのか。 リングは広くて平坦なため、虐待お兄さんの動きを封じた状態からジャンプしないと、とてもじゃないが踏みつけを決めることはできないであろう。 闇雲にジャンプ踏みつけを繰り返す方法もあるにはあるが、いたずらにスタミナを消費すると後が怖い。となると…… ドスまりさの作戦は、再び相手のスタミナ切れまでひたすら耐える事となった。 消去的な作戦ではあるが、先ほどのようにスリップダウンを期待できるかもしれない。 そしてなにより、なかなかにゆっくりした作戦ではないか。 そんなよくわからない理由で作戦を決定したとは露知らず、虐待お兄さんはひたすらローキックを何ダースと放っていく。 そしてそのまま、ただただ時間が過ぎていった。 リズミカルなローキックの音に、応援シートのゆっくり達はうとうとと船を漕ぎ始めている。 第2ラウンド残り1分のあたりで、再びアクシデントは起こった。 なんと、またもや虐待お兄さんがローキック後に後方へ下がる際に、自らの汗が溜まっていた場所で足を滑らせてしまったのである。 虐待お兄さんが仰向けにスリップダウンすると、ドスまりさはすかさず間合いをつめ ……られない。 足が思うように動かないことに、ドスまりさはここへ来て初めて気がついたのである。 第2ラウンド開始直後から間合いを詰める速度が遅くなったように感じたのは、ドスまりさの動きが遅くなったからなのだ。 虐待お兄さんのローキックは、ドスまりさに痛みを与えることは確かに無かった。 無かったのではあるが、一撃ごとに見えない傷をドスまりさの下部に確かに刻み続けていたのである。 その傷が増えたこと、そして打撃を浴び続けたことにより、ドスまりさの下部及び底面の皮と餡子が硬化して、ドスまりさの歩行を妨げるようになったのである。 ドスまりさは驚き、そしてとっさに考える。このままではまずいのだ。 今は少しだけなら動けるのだが、このままローキックを浴び続けていれば、きっと完全に動けなくなる。 そうなれば、ジャンプしたりのしかかることすらできない。それどころか、自ら倒れることもできない。 ドスまりさの攻撃手段が完全に失われてしまうのだ。 これ以上 もたもたするわけにはいかない。ドスまりさは最後の賭けに出ることにした。 大きく口を開け、口内から輝きが広がりだす。ドスパークの体勢である。 ルールにより、キノコの使用は禁止されているが、体内に残っているキノコ成分を搾りだせば、何とか一発くらいはドスパークを放つことができるのである。 虐待お兄さんはハッと気づき、横方向に回避するが…… 『あまいよ!』 ドスまりさは振り返り、ドスパークを発射させた。閃光が広場に広がる。 キノコが無い分、通常のドスパークより威力は無いが、それでも十分な威力は残っている。 閃光が収まった後、ドスまりさは自らが奪ってしまった命に黙祷を捧げる。 『ごめんね、こうするしかなかったんだよ。あの世でゆっくりしていってね。』 ……確かにドスパークの威力は十分であった。 特設ゆっくり応援シートとそこに座っていた100を超えるゆっくり達を完全に蒸発させるには十分であったのだ。 「「「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぎゃああああぁぁぁぁ」」」 セコンドのぱちゅりーとありす、そしてジャッジれいむの悲鳴が場内にこだました。 そして聞きなれた打撃音が再び響きだす。 虐待お兄さんはドスパークをしっかり回避していたのである。 最初の回避で特設ゆっくり応援シートの方向にドスパークを誘導させた上で、斜めに回り込むように前転してドスまりさの背後へまわっていたのだ。 ドスまりさは魂が抜けたかのように固まっていた。 自ら、群れの同族を、100を超える同族達を消し去ってしまったのである。 その後は第2ラウンド終了のゴングが鳴るまで、虐待お兄さんの足とドスまりさの体が聞きなれた打撃音を奏で続けることとなった。 第2ラウンド終了のゴングが鳴る。 「リング調整のため、しばらく時間をいただきます。あらかじめご了承ください。」 ドスパークで消失したロープを補修するため、インターバルは少し長めに取られることとなった。 虐待お兄さんは赤コーナーに戻り、用意された椅子に座って眠りはじめてしまった。 慣れない環境で第1ラウンド途中から動きっぱなしで、さすがに疲れてしまったのであろう。 一方のドスまりさは、スタッフの手を借りずには動けないほどひどい状態であった。 セコンドのぱちゅりーとありすも目の前で起こった惨劇のショックからか、口数は少ない。 ジャッジれいむは白目をむいて気絶していた。 「むきゅ、すぎたことはしかたないのよ。きりかえて、さいごまでたたかいましょう。」 なんとかドスまりさを勇気づけようとするぱちゅりー。 「まりざがぁぁぁぁ! ありすのはにーがぁぁぁぁ!」 隣でショックをぶり返させるかのように泣き叫び続けるありす。 どうやら応援シートにいた最愛のまりさ(通常サイズ)を失ってしまったようである。 その言葉を聞き、ドスまりさは目に涙を浮かべはじめていた。 「むきゅ、ありす、しっかりして! しぬことはかくごのうえだったはずよ!」 ぱちゅりーがありすをなだめる。 「ゆぅ〜、ゆぅ〜、ゆぅ〜…… そうね…… どす、あいてはあんなにへばってるわ、ちゃんすはあるはずよ。」 深呼吸をしてどうにか落ち着きを取り戻したありすは再びアドバイスを送った。 「レフェリー、まりさの足の応急手当を要求するわ!」 レフェリーを呼びつけるぱちゅりー。 しかし、レフェリーは首を横に振る。ルールに明記してあるからだ。 ”・軽度の出血あるいは出餡をした場合は、傷を塞ぐ応急処置を施して試合を続行する。その他の場合の応急処置等は一切認めない。” この試合、ドスまりさは餡子を流していないのである。 「む、むきゅ〜」 ぐうの音も出ないぱちゅりー。 そうこうしているうちに、インターバルは終了し、第3ラウンド開始のゴングが鳴り響く。 「ひゃっはぁぁぁぁぁあああああ!」 第3ラウンド開始と同時に、虐待お兄さんはラッシュをかける。 「「『な、なんで? さっきまであんなにつかれていたのに!?』」」 ドスまりさもセコンドの2匹も驚きを隠せない。虐待お兄さんのどこにそんなスタミナが残っているのか。 虐待お兄さんは思い出す。自らの過酷な練習の日々を。 玄翁を持ってゆっくりを追いかけまわすロードワーク。 群れからこっそりと誘拐してきたゆっくり達の皮をつぎはぎして作ったサンドバッグ。 その中に赤ゆっくり達を詰め込んでのキック練習。 そして、ゆっくりをそのままミットにしてのコンビネーション打撃練習。 どの練習もとても過酷で……とても楽しく身が入った。 この練習を考えたトレーナーには感謝しきりである。 そんな楽しい練習を続けてきた虐待お兄さんにスタミナの心配など不要なのである。 先ほど眠っていたのは、より全力でラッシュをかけるための準備にすぎない。 虐待お兄さんは短時間の睡眠で体力を完全に回復させることができる、生粋のアスリートとなっていたのである。 左右パンチ、フック、ストレート、アッパー、ローキック、ミドルキック、ハイキック、ジャンピングキック、膝蹴り、エルボー、頭突き、ハンマーブロー、水平チョップ、ドロップキック、フライングクロスチョップ、延髄蹴り…… 先ほどまでとは打って変っての打撃技のオンパレード。まるで水を得た魚のようである。 全力の生身虐待をぶつけることをできる喜びを、技の一つ一つで表現するかのようであった。 「ゆぎゃっ!」「ゆぶっ!」「ゆげっ!」「ゆぼぅっ!」 その一撃一撃はドスまりさへ確かに痛みを伝えていた。 先ほどまでのローキックはあくまで表面を傷つけるために放っていた物である。 しかし今回は内部の餡子を傷つけるために攻撃を放っている。 時には中枢餡へと届くかというような攻撃もあるのだ。 第3ラウンドは3分間みっちり、虐待お兄さんのラッシュが続き、そのまま終了のゴングが鳴った。 「それでは判定に入ります。」 ゆっくりがほとんどいなくなった場内にアナウンスが響き渡る。 「ジャッジ長老……10 0 赤、虐待お兄さん!」 長老は静かに、リングを見つめ続ける。妥当と言えば妥当なジャッジである。 「ジャッジれいむ……0 10 青、ドスまりさ!」 気絶状態から復活した涙目のれいむ。ゆっくり種としては当然なジャッジである。公平ってなんだろう。 結局、勝敗は一人の少女ジャッジに委ねられる事となった。 「ジャッジ阿求……10 10 ドロー!」 少女の名前は阿求と言うようだ。 結果は1−1、ポイントも20−20で完全なドローである。 不測の事態に本部とアナウンスは慌て出す。 数分の協議の結果、一つの結論が導きだされた。 「ジャッジで決着がつかなかったため、3分間の再延長戦を行います!」 場内アナウンスに、観客達は大いに沸いた。 「ゆゆ? ゆゆゆゆゆ!?」 ドスまりさは驚きを隠せない。もう終わったと思ったのに。もう帰れると思ったのに。 第4ラウンド開始のゴングが非情にも鳴り響いた。 「いやっはぁぁあああああぁぁぁぁ!」 ジャッジの最中も再び眠りについていた虐待お兄さんはこのラウンドも元気いっぱいである。 第4ラウンドも3分間みっちり、虐待お兄さんのラッシュが続き、そのまま終了のゴングが鳴った。 再びジャッジが行われる。まるでデジャブであるかのように。 そしてその結果もまた、デジャブであるかのようであった。 「ジャッジで決着がつかなかったため、3分間の再々延長戦を行います!」 ……この一連のデジャブは2度3度と続いていくのであった。 結局、その後第10ラウンドまで行ったところで、ぱちゅりーがジャッジれいむを説得してゆっくり側の敗北を認めるこっとなった。 「ゆ゛……ゆ゛……ゆ゛……」まともな言葉も発することができなくなっているドスまりさ。 試合後にようやく応急処置が認められたが、自走できる状態ではなく、村の者たちが巣まで送り届けてやることとなった。 「はい、あなたのれいむよ。」 阿求という少女が、れいむをドスまりさのところに連れていってやった。 「あなたはよくやったわ。群れも無くならないでしょ? だって……あなたが自ら口減らししたんだもの。」 少女がドスまりさに言う。 その言葉は慰めにならない。その言葉は追い打ちにしかならない。もちろん、その事は言葉を発している少女が一番よくわかっているのであるが。 なにより、その声のトーンは喜びの色を隠し切れていなかった。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!」 うなだれるドスまりさを見て、れいむは無垢な表情でそういった。 あまりのショックで記憶を失っているのかもしれない。むしろその方が幸せなのであろう。 ドスまりさは、れいむに合わせる顔が無く、うつむいたままであった。 「れいむ、ぼうしのなかにはいってね……」 ドスまりさはうつむいたままそう言って、阿求に手伝ってもらい、帽子の中にれいむを収納した。 これで少なくとも巣に帰るまで顔を合わせずに済むのである。 「おさわがせしてごめんね……ゆっくりしていってね……」 ドスまりさはそう言って、村を去っていった。 正々堂々と戦い敗れたドスまりさに、観客達からは拍手が浴びせられる。 しかしその拍手さえも、ドスまりさには慰めにすらならなかった。 ドスまりさ達が去ったのを確認した後、リングとその周辺には残された虐待お兄さんと長老、そして観客達が興奮さめやらぬ様子で居残っていた。 虐待お兄さんがマイクを要求し、これを受け取る。 「しょっぱい試合してすんませんでした!」 リングの各方向にお辞儀をする虐待お兄さん。 「そんなことないぞー!」「おもしろかったぞー!」 観客はそれを否定し、虐待お兄さんはその言葉に再びお辞儀をした。 「長老、はいってきてください!」 虐待お兄さんは長老を呼び込む。 「長老、ここまで育ててくれて、本当にありがとうございます! これからもご指導よろしくお願いします!」 虐待お兄さんは長老に非常に感謝しており、この場を借りてお礼を言いたかったのだ。 何せ、今日までの特訓のトレーナーを務めたのは、誰あろう長老その人であったのだから。 その言葉を聞き、観客達は大きな拍手を送る。2人の事情を知っており、涙ぐむ者までいる。 すると、今度は長老が虐待お兄さんからマイクを受け取り、言葉を発した。 「素晴らしい試合だった。本当にありがとう! 感動した!」 まずは虐待お兄さんを労い、続ける。 「そして、長年の計画に協力してくれた皆、本当にありがとう!」 長年の計画…… 長老が若い頃から抱いていた野望…… それは1vs1ならば人間にも勝てると思っているドスまりさの心を、完膚なきまでに叩き折る事であった。 長老もまた、虐待お兄さんだったのである。 計画の主軸はすなわち、生身の人間との1vs1でドスまりさを打ち倒すことである。 この計画を思いついた時点で、残念ながら初代虐待お兄さん=長老の肉体は すでにピークを越えて久しかった。 そこで出会ったのが、ゆっくり虐待していた孤児の少年=今回戦った虐待お兄さんであった。 長老は少年に比類なき虐待の素質を感じた。そしてその可能性にすべてを賭けたのである。 長老は少年にゆっくり虐待アスリートとしてのエリート教育を施した。 そして、少年が青年になり、肉体のピークを迎えつつある今、計画を実行に移したのである。 今年は草原の植物が異様に少なかった。ドスまりさ達はそう思っていた。 しかし実際は、長老が命じて早い段階で植物の芽を摘んでいたのである。 村の畑は今年も豊作で、食糧庫には売るほどの蓄えが備わっているのだ。 村の者達はゆっくりの群れに手をだすことはない。ドスまりさ達はそう思っていた。 しかし実際は、長老が命じて気づかれないように誘拐して、各種処理を施していたのである。 その結果、虐待お兄さんのトレーニングは非常に身になる物となったのだ。 「それでは、皆さん、御唱和願います。」 長老は続ける。 その手には1匹のゆっくりが握られ、ガタガタと震えていた。 それはゆっくりれいむ種。ジャッジれいむであったゆっくりれいむである。 隣でジャッジを務めていた少女が気を利かせて、ストックしていた他のゆっくりれいむと飾りだけを交換して、偽物のれいむをドスまりさに渡したのだ。 長老は続ける。 「いくぞー!」 観客は応える。 「「「『 おー! 』」」」 そして長老と観客達が声を合わせる。 「「「「『 3! 』」」」」 「「「「『 2! 』」」」」 「「「「『 1! 』」」」」 「「「「『 ひゃっはああぁぁぁ! ぎゃくたいだあああぁぁぁ!!! 』」」」」 合唱とともに、長老……いや、初代虐待お兄さんは、手にしたゆっくいれいむを握りつぶした。 感動の試合をその目に焼きつけ、幸せな年の瀬を迎えるであろう村の者達であった。 一方、ドスまりさ達は絶望の年の瀬を迎えることになる。 それでも、ドスまりさは生き続けなければならない。 そうでなければ群れのために死んでしまった……いや自分が殺してしまった者達に示しがつかないのである。 だからドスまりさは生き続ける。 人間と1vs1で負けたことを背負い生き続ける。 100を超える同族を殺した罪を背負い生き続ける。 愛するれいむを失ったことも気づかぬまま生き続けるのである。
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※『森のお医者様』 ]]『村のお医者様』の続きですので、そちらのほうを読んでから このSSを読んでいただかないと話の流れが分からないと思うので、上記2作を読んでいない方は、お手数ですが 上記2作を読んでからこのSSを読んでください・・・ 勝手ですが、作者からのお願いです。 (ちなみに、 青年=えーりんを飼っている男、幼馴染=青年の幼馴染である虐待お兄さん、男=めーりんを飼っている男、と分けていますです。 えーりんは、幼馴染の言葉にしばし呆然となった。 えーりんは呟いた。 「・・・どうして?」 どうしてなのだ。自分がぷれいすを離れたのはあいつらに言われたことが原因だというのに。あんまりにも身勝手すぎる。 「おい」 えーりんの飼い主の青年は呼びかける。幼馴染は顔を向ける。 「マジで?」 「こんな微妙な嘘つくわけねえだろアホか」 「・・・めんどくせえなぁ・・・えーりん、どうするんだ?」 ガリガリと頭を掻きながら青年はえーりんに問いかける。 「いかないというわけにもいかないでしょう」 「そうか・・・」 その会話に、怪我をして先程治療を受けに来ためーりんを飼っている男が口を挟んだ。 「あー、その・・・行く必要は無くなったみたいだぞ」 「え?」 二人と一匹は男に顔を向ける。 男は、青年の家の窓から少し離れた位置から、地面を見下ろしている。 その方向には・・・ 「「「「「えーりんをかえしてね!!ぷんぷん!!!」」」」」 「「「「「ぷきゅーっ!!」」」」」 地面には5匹の成体ゆっくりと、同じく地面に5匹の赤ゆっくり達が固まっていた。 成体ゆっくりのうち2匹(れいむとちぇん)は、腹が膨らんでいる。にんっしんっしているのだろうか。 赤ゆっくりは、まりさが2匹ありすが2匹、みょんが1匹。 その全てが、頬を膨らませて威嚇している。 「そういやあこの家って森に一番近いんだったっけな・・・」 幼馴染は呟く。 えーりんは黙って家の窓のふちまで跳ねていき、そこからそのゆっくり達を見下ろした。青年達はそんなえーりんの後姿を見守っていた。 「ゆ!えーりんだぜ!!」 まりさの一言に弾かれたように、ゆっくり達は威嚇を止めて、 「えーりん!れいむたちのゆっくりぷれいすにもどってきてね!!」 「おねがいするわ!あなたがいないとふあんでゆっくりできないのよ!」 「ちーんぽ!」 「わかってねー」 成体5匹は口々にこう言う。赤ゆっくり達は目を輝かせて「ゆぅ~」と言いながらえーりんを見つめている。 それを見たえーりんは、目を細め、不機嫌そうな表情で、突き放すように言った。 「・・・いやよ」 それを聞いたゆっくり達は、 「「「「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!!???」」」」」 と、涙を撒き散らしながら声をそろえて嘆く。 「いまさらぷれいすにかえるきになんてならないもの」 「なにいっでるのぉぉぉ!!!えーりんはありずだぢのゆっくりぷれいすのおいしゃさまでしょぉぉぉ!!」 そう言うありすに向けて、えーりんは答える。 「それはちがうわ。 わたしはゆっくりのおいしゃさま。あなたたちだけのものになることはできない」 「ぞんなごどいわないでねぇぇぇ!!!」 「えーりん!おねがいなのぜ!かえってきてほしいのぜ!」 そう言うまりさに、えーりんは顔を向け、 「あなたがそれをいうの?どのくちでいってるのよ?」 そこまで言ってから一呼吸置き、さらに咎めるような口調で言った。 「ねえまりさ。あなた、どうしてわたしがぷれいすをはなれたのかわかってるの?」 「・・・ゆ?・・・ぷれいすがゆっくりできなくなったから?」 「うん。じゃあゆっくりできなくなったげんいんは?わかる?」 えーりんは静かに、しかし強い口調で、まりさに言葉をぶつけていく。 このまりさは、ぷれいすが捕食種達に襲われた次の日に、治療をするえーりんを罵倒したゆっくりの一匹である。 頬につけられた、治りかけている大きな傷が目印だ。 そのときに言い放たれた言葉を、えーりんは未だにはっきりと覚えている。 「えーりんなんてえいえんにゆっくりできなくなっちまえなのぜ!!!」 そうまで言ってのけたまりさが、今こうしてえーりんを連れ戻そうと説得しているのは、ひどく滑稽に思える。 「・・・わからないのぜ」 まりさは数十秒間悩んだが、答えを導き出すことができなかった。 自分に都合の悪いことは忘れてしまうという通常ゆっくりの性質を、えーりんは改めて確認した。 「そう。まあ、あなたがおぼえていたとしてもわたしはぷれいすにもどったりすることはないけどね」 「どういうことなのぜ?」 「ねえまりさ。わたしがぷれいすをでていったのは、あなたにもげんいんがあるのよ」 「ゆ!?・・・なにいってるのかわからないのぜ」 「はぁ・・・」 えーりんは溜め息をついた。 えーりんを見上げていたゆっくり達も、折れないえーりんを見て、すっかり元気を無くしてしまっている。 数秒の沈黙の後、えーりんは振り向いて、青年達に向かって、 「こいつら、どうおもいます?」 と問いかけた。 「勝手だな」 「しつこい」 「いじめまくりたい」 と、青年、男、幼馴染の順に言った。 「・・・さいごいがい、わたしもどうかんです」 えーりんは言う。 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!!??」 幼馴染は叫ぶ。 「・・・おにいさんのおともだちさん、ゆっくりがそのごしゅみをりかいするわけにはいかないのです」 「・・・そうか・・・」 「そのごしゅみは、ぐたいてきにどういうことをするのかは、どすゆかりんからきいています」 「なんでそんなこと知ってるの君のところのドスは・・・」 「しょうじき、そのごしゅみのたいしょうがわたしにむけられたら・・・とおもうと、すごくこわいです。 まあ、でも、そのごしゅみのたいしょうをわたしにむけられることがなければ」 「なんだそうか。安心しろ、君を虐めたいなんて思わないから」 幼馴染は満足げに頷きながら言う。 「というか、そのごしゅみじたいなくしていただけると、ほんとうにあんしんできるのですが」 「すまぬ、それは無理だ」 「・・・まあ、それはともかく、こいつら、なんとかしていただけませんか?」 「え?マジ!?」 「あ・・・その・・・わたしがおねがいしたいのは、こいつらを、 おにいさんたちのほうからもとのぷれいすにもどるようなんとかしていただきたいというだけです。 いじめたり、えいえんにゆっくりできなくなるようなことはしないでいただけますね?」 「ゆ・・・?」「え、えーりん、なにいってるの?」 ゆっくり達と同様に、青年達も困惑した。 「・・・いいのか?その、言うこと聞いてやらなくて」 幼馴染は確認する。それに、えーりんは頷く。 「いいんです」 「そうか。あ・・・その、さ、君のとこのドスからなんか報復されたりする可能性があるのかもしれないのが心配」 「だいじょうぶだとおもいます。どすはわたしがぷれいすからはなれることにはんたいはしませんでしたし、 こいつらは、どうせどすからのきょかもとっていないでしょう。どすがこんなおおぜいをよこしてくるとはおもえませんから」 ちなみに、許可を出された?のはまりさ一匹だけである。 「ドスねえ・・・君のとこのドスって、そんな優秀なのか?」 再び聞いてきた幼馴染に、またえーりんは頷く。 「どすは・・・きびしくもありますが、どすのいうとおりにすれば、どんなこともうまくいくんです。」 「・・・そうか。ドスには怒られ、さらに時間を割いて村まで来たのにえーりんを連れ戻せなかった、じゃあ 得することがなんも無くなっちまうから、絶対にえーりんを連れ戻さなくちゃいけないわけだ」 「・・・わたしにはなんともいえませんが・・・そうなのかもしれませんね。こんなにしつこいのは」 「ハハッ、こいつらも馬鹿だな。苦しんで殺される位なら怒られるほうがマシなのに」 「え?」 「いやなんでもない」 彼は、少々心が痛むが、えーりんに言われたことを守るつもりは無い。 幼馴染は、猛スピードで玄関へ向かい、青年の家から飛び出して、頬を膨らませるゆっくり達を捕まえようとした、その時・・・ 「ま、まって、ください!にんげんさん!!」 という声が聞こえた。 えーりんとゆっくり達と幼馴染は、声のした方向に顔を向けた。こちらに向かってきたのは・・・ 「「「「「「「らん!」」」」」」」「らんとは。珍しい」 群れの幹部の、あのらんであった。 「はぁ、・・・はぁ・・・」 「らん、どうしたのよ?!」 えーりんはぽいんと窓から降りて、らんに尋ねる。青年はそれを追うように窓に歩み寄って、窓から地面を見下ろす。 らんは、息を切らしながら告げた。 「・・・っ、そいつらを、つれもどしに、きた」 「?」 「ら、ら、らんだぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆっくりできないわぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆっくりごろしがれいむにぢがづがないでねぇぇぇ!!」 「ちっ、ちんぽ!!」 「・・・」ガタガタ 叫ぶ4匹、みょんの背後に隠れて震えるちぇん。五匹の普通ではない反応と、そしてれいむがらんに向けて言った言葉が、えーりんは気にかかった。 「らん、あなた、なにをしたの?」 「・・・」 らんは俯きながら黙っている。 「らんは・・・らんは、れいむをえいえんにゆっくりできなくさせちゃったんだぜ!!!」 まりさが叫ぶ。その言葉に、えーりんはにんっしんっれいむを見ながら首を傾げる。 「れいむならそこにいるじゃない。なにいってるの?」 「そうじゃないぃいいい!!!もうひとりれいむがきてたのぉぉぉお!!!」 「ああ、そういうことね・・・でも、」 えーりんの知っているらんは・・・というか捕食種でないゆっくりなら当然のことだが、 無闇に他のゆっくりを殺したりはしない。らんは群れの幹部をやっていけるくらいなのだからなおさらのことだ。 らんが我を忘れてそんなことをするとは、ただ事ではない。恐らく・・・ 「そのれいむが、らんをおこらせるようなことをしちゃったんでしょ?」 「ゆ・・・まあ、それは・・・」 「やっぱり」 「それよりらん、れいむのあかちゃんはどうしたのよ!?まさかおきざりに・・・」 らんは黙ったまま尻尾で帽子を上げて頭頂部を見せる。そこに、 「ゆぅ~・・・」「ゆぴー」 あの3匹の赤れいむ達がいた。グッスリと眠っている。目に隈が出来ている。泣き疲れてしまったのだろうか。 「あぁ・・・」 五匹は安堵の溜め息をつく。 それを見てから、らんは口を開く。 「れいむのことは、ほんとうにすまなかった。ばつはかならずうける。 おまえたちといっしょにぷれいすにもどってからな」 「・・・」 「だからたのむ、ぷれいすにもどってくれ、みんな」 「えーりんは・・・どうするの?」 ちぇんはえーりんのほうを向いて尋ねる。 「なんどいえばわかるの?」 「わっ・・・わかるよ~・・・ごめんなんだよ~」 「っていうかあなたたちなんでわざわざおちびちゃんたちまでつれてきたのよ?あしでまといじゃない?」 「ゆ・・・それはね・・・」 れいむはまりさのほうをちらりと横目で見る。 まりさは口を開いた。 「おちびちゃんはゆっくりできるものだぜ!かわいいぜ! だからおちびちゃんたちをみせればにんげんもめろめろになって、えーりんをつれてかえってもひきとめられないだろうとおもったのぜ!」 それを聞いた青年は呟く。 「ゆっくり理論は理解出来ん・・・」 それを聞いたえーりんが振り向き、青年を見上げて、そして苦々しげに笑いかけ、言った。 「しょうがないです。にんげんさんとわたしたちはちがいますから」 「そうだな」 青年とえーりんは笑いあった。 「えーりん、なにしてるのぜ?」 まりさの呼ぶような声が背後から聞こえたので、えーりんはまた振り向いた。 「なんでもないわ。それより、いつまでここにいるつもりよ?」 「えーりんがまりさたちといっしょにぷれいすまでかえるけっしんをつけるまでだぜ」 それを聞いたらんは、イライラしたような声でまりさに言い放つ。 「・・・まりさ」 「ゆ?」 「いいかげんにしろ。もうすぐひがくれる、れみりゃやふらんがあらわれるじかんだ。はやくもどらないといけないぞ」 「そうなったら、にんげんのおうちをうばえばいいのぜ。そんなこともわからないのぜ?」 「えっ」 「何それ怖い」 まりさの言った言葉に、青年と幼馴染は反射的に呟いた。 それに対し、まりさはこう言った。 「ゆ?なにまぬけなかおしてるの?まりさたちにできないわけないでしょ?」 「「「「・・・」」」」 青年と男とえーりんとらんは、心底呆れたような顔でまりさを見つめている。 「な、なんなのぜ?できないとでもおもってるのぜ?」 それに対して、幼馴染が答える。 「何なの?出来るとでも思ってんの?」 「あたりまえだぜ。にんげんがたばになってかかってきてもまりさにかなうわけないでしょ」 「いつも思う。その自信の根拠はどこから来るのかと。お前今まで人間に会った事あるか?」 「これがはじめてだぜ」 「えっ・・・おかしいって思ったことは無いか?」 「ないぜ。でも、まりさはもりのなかならつよいほうにはいるとはおもってるぜ!」 「えっ・・・その、もう一回聞くが、ゆっくりが人間に勝てると思ってるのか?」 「そうだぜ!ひとめみてわかったぜ!にんげんにまりさがまけるわけないぜ! おおきさなら、にんげんとまりさはおなじくらいなのぜ!!」 どうやらこいつは頭の大きさで敵の強弱を見極めるタイプのゆっくりのようだ。 「ああ・・・なるほどね。でもさ・・・本気で思ってる?」 「あたりまえだよ!!!なんかいいわせるの!?」 「えぇ~何コイツ思考回路おかしいよ絶対・・・えーりんに診てもらうべきだろ・・・」 と嘆く青年に、幼馴染は諭すように言い始めた。 「まあそう嘆くな我が友よ・・・ ゆっくりにも個性ってものは当然ある。その個性が形成されていく過程で、ゆっくりは色んなことを吸収していくわけだ。 親のからの知識だったり、自分の体験からだったりな。 そんで、このまりさはたまたま、自分と同じくらいの大きさの敵に勝ち続けてきちまったんだ」 「れみりゃにぼろぼろにされちゃったことはわすれたみたいですけどね」 「・・・だから、ゆっくりの基準なら、特別頭がおかしいってわけじゃないのさ。こんなこと言うゆっくりはたくさんいるぜ。 それに、さっきえーりんが言ってただろ。人間とゆっくりは違うって」 「・・・ふーん。ためになるお話をありがとう」 青年は、別になんとも思っていないような表情で幼馴染に礼を言った。 「・・・で、らん、どうするのよ?」 えーりんは、無表情のままらんに問う。 それに対し、らんは、呆れ顔で言った。 「・・・さっき、もりのなかでわたしのいったことをおぼえてないようなら、わたしと、れいむのあかちゃんだけでぷれいすにもどる」 「「「「ゆ!?」」」」「ら、らんしゃま?」 「・・・らん、ぷれいすにかえるの?」 えーりんは確認する。 「そうだな。もうかえる。・・・ゆかりんさまから、つれもどしてこいとしれいをうけていたのだがな。 そのけっかがあかれいむさんにんだけとは、もうしわけないきもするが」 「どすになんていうつもり?」 「ありのままをはなすしかないだろう」 「そう。・・・らん、たっしゃでね」 「ああ」 「・・・あ、らん。いつもの、わすれてたわね」 「え?」 「ゆっくりしていってね」 「・・・ああ。ゆっくりしていってね!」 えーりんと別れの挨拶を交わしたらんが後姿を見せた瞬間、ちぇんはその後を追おうとした。 「ちょ、ちょっとまってらんしゃま!まって、おいてかないで!!」 「・・・どうしたのちぇん?にんげんさんはこわくないんじゃなくて?」 えーりんの問いに立ち止まって、振り向いて、ちぇんは答えた。 「・・・らんしゃまは、どすがあいてをしてもにんげんさんにはかなわないっていってたよ~・・・はじめはしんじられなかったけど、 らんしゃまのいうことはいつもただしいんだよ・・・だから、いまさらだけどこわくなってきたよ・・・それに、」 「ん?」 「らんしゃまにみすてられるのも、おなじくらいこわいよ~・・・ゆっくりできないんだy・・・ゆ?」 「・・・」 そこまでえーりんに向けて言ったとき、ふと、ちぇんは、まりさの様子がおかしいことに気付いた。 「まりs」 どうしたの?と続くはずだったのだが・・・ 「ゆっくりでぎないえーりんはゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」 まりさはそう叫び、えーりんに体当たりをした。 「ゆ゛っ!?」 えーりんはそのまま幼馴染の足元まで転がる。 それを見たちぇんは・・・いや、まりさ以外の、そこに居合わせた全ての生き物が驚愕した。 叫び声を聞きつけたらんがこちらまで戻ってくるのが見えた。 「ちょ、ちょっとまってねまりさ!えーりんをゆっくりできなくさせちゃだめだよ!!」 れいむはそう言うが、まりさは怒りの形相のまま再び叫ぶ。 「なんでえーりんはまりさたちのいうことをきいてくれないのぜ!?いうこときいてくれないと、まりさおこるのぜ!! まりさをおこらせるといたいめにあうんだよ!!またいたいめにあいたくないなら、いまのうちにぷれいすにもどるけっしんをしてね! でないと、まりさがえーりんをえいえんにゆっくりできなくさせるよ!!!」 その言葉を聞いた他の4匹はうろたえた。 「・・・ふふっ」 えーりんは、横になったまま砂だらけの顔に笑みを浮かべるだけだ。 「えーりん!さっさt」 「このばかまりさがぁぁぁぁ!!!」 「ゆべっ」 その時、らんがまりさに体当たりをして突き飛ばした。まりさの帽子が舞い上がる。 突き飛ばされたまりさのほうに、成体4匹は跳ねていく。 落ちてきた帽子を咥えて横に置くと、らんはまりさに向かって言い放つ。 「じぶんのいうとおりにならなければゆっくりできなくなれだと?・・・きさまがそんなわがままだとはおもいもしなかったぞ」 「ら、らん・・・」 「それにまりさ・・・いつもいつも、もじどおり『みをけずって』けがをなおすえーりんがいたみになれていないわけがないだろう。 こうげきでえーりんをおることはできん。 そんなちょうしだからえーりんにあいそをつかされるのだ」 「ゆ・・・」 「まりさ、こんごいっさいぷれいすにはもどってくるな。このぼうしはつかえなくしておく」 「ゆぅ!?」 言い終えたらんは、まりさの帽子を尻尾に引っ掛けたまま、今度こそ森の方向へ去っていった。 「ち、ぢょっどまっでぇぇぇぇ!!!ばりざのおぼうじぃぃぃぃ!!ゆっぐりでぎないよぉぉぉ!!!がえじでぇぇぇぇ!!!」 まりさは横になったまま顔を歪めて号泣するが、らんが振り向くことはなかった。 そんなまりさを、周りの成体4匹は冷ややかな目で見つめていた。 えーりんは、玄関から外に出てきた青年に抱きかかえられたまま、5匹を見下ろしていた。 いたたまれなくなったちぇんはらんの向かっていった方向に顔を向ける。既にらんの姿は見えなくなっていた。 ちぇんは口を開いた。 「みんな・・・かえろうよ・・・」 まりさ以外の3匹は、その言葉に無言で頷いた。 4匹は、抱きかかえられているえーりんを見上げ、一斉に言った。 「「「えーりん、にんげんのむらでゆっくりしていってね!!!」」」「ちーんぽ!!!」 その言葉に、えーりんは答えた。 「ゆっくりしていってね!!!」 と。 「なんか日本語として成立してない気がするんだが」 「だから人間とゆっくりは違うんだってば」 「いや、きっと今のえーりんの『ゆっくりしていってね』は『ゆっくりしていくね』って意味なんだろ」 「なら『ゆっくりしていくね』って返せばいいじゃん」 「それは『ゆっくりしていってね』って言われたから仕方ないことさ。これが定番だし」 「えっ・・・俺初対面のとき『ゆっくりしていくよ』って返しちまったんだが」 「まあそれは、お前は人間だから気にしなくていいんだよ。俺なんて『うるせえ死ね』って返すし」 「「それは無いわ」」 頭上で繰り広げられる『ゆっくりしていってね』についての議論に耳を傾けながら、 らんと同じ方向へ去っていった4匹をえーりんは見送った。 「・・・そう。分かったわ。残念だけれど」 「もうしわけありません」 運よく、捕食種に出会うことなくぷれいすに帰ったらんは、元の親れいむの家の中に、食料を添えて赤れいむ3匹をそっと置いた後、 ドスゆかりんの巣穴に戻り、今回のことのありのままを報告した。 「らん、あなたもゆっくりだから、もちろん失敗することもあるのはわかるわ。とは言えど、今回が初めてよね。失敗したのは」 「はい」 「正直、意外だったわ」 ゆかりんは笑いながららんに言う。 「私は『なんとしてでも連れ戻して来い』って言ったのにね。あなたが私の指令を破るなんて思ってもみなかったわ」 「ほんとうに、もうしわけありませんでした」 「良いのよ、気にしなくて。ま、ゆっくり殺しの件の罰は考えておくけれど」 「はい」 「今日は、あとはゆっくりおやすみなさい」 なんとも妙なことだ。数時間前と言っていることが違っている。 「はい。おやすみなさいませ」 「ええ」 自室に戻るらんの後姿を見送り、ゆかりんは考える。 (人間さんと交流をなくしてしばらくすれば、こういうことは必ず起きるっていうことを覚えとかなくちゃね) 思えば、森の奥にぷれいすを移してから2年が経っている。 ちなみに、群れの創立は6年前、らんが幹部になったのは3年前である。 (群れのゆっくりがまた減ったのは大変だけど、よく考えたら結構簡単に私たちは数を増やすことができるし、 このぷれいすに住んでるわけじゃない他のゆっくりがここに住み始めることはちょくちょくあるのよね) 事実、らんが人間の村に行っている間にも、一匹のまりさが、このぷれいすでおうち宣言をさせてもらったりしている。 (大丈夫だと思っておこうかしら。きっとあのまりさ達はもう帰って来ないだろうから、もう人間さんに関わろうなんて誰も思わないだろうし。 あのまりさ達には申し訳ないけど、誰かがこういう目に会わないといけなかったのよね。 ・・・でも、食料調達のとき以外は、しばらくは群れの外出を制限しようかしらねぇ・・・) そこまで考えたとき、外から、数匹のゆっくりの声が聞こえてきた。 声の雰囲気からすると、なぜだか知らないが、安堵したような様子である。 なにやら良い予感がしたゆかりんは、隙間をつなげて、上空からぷれいすを見下ろした。 ゆかりんの視線の先には、成体ゆっくり4匹と、その子供達が映っていた。 (・・・らん。これだけ帰らせてきたなら、十分に仕事はしてきてくれたみたいね。 外出制限じゃなくて、代わりに人間さんについての勉強が必要になっちゃうでしょうけど) ゆかりんとらんが居る限り、このぷれいすは安泰だろう。 いつものとおり、村のゆっくりの診察をし、夕食を食べ、そしてまた診察をし、 と言った調子で過ごしたこの日の夜。 「えーりん、本当に良かったのか?」 青年は布団にえーりんを入れながら尋ねる。 「はい?」 えーりんは首をかしげる。 「ぷれいすに戻らなくてさ・・・必要とされてるんだぞ?」 「いいんです。・・・ここにもひつようとしてくれるゆっくりがいます。それにわたしは、ここのほうがゆっくりできるんです」 「・・・そうか」 「はい。とっても」 「・・・」 「それに、このむらにすんでるひとたちもやさしいですしね」 「・・・そうか」 「はい!」 えーりんは笑顔で言う。 そんなえーりんを見て、青年は思った。 (なら、絶対にあいつに手は出させないようにしないとな。飼いゆっくりに手を出したことは無いって言ってたけど、それでも心配だ) 「それと、えーりん」 「はい?」 「君でも怒ることがあるんだな」 「・・・うふふっ、あたりまえですよ」 「そうか」 「ええ」 「おやすみ、えーりん」 「はい、おやすみなさい。おにいさん」 一人と一匹は夢の世界へ入っていった。 「ひゃ、ひゃめるのふぇ!まりふぁにほんなことひないでほひいのへ!!」 部屋の中には、頬を膨らませた帽子の無い成体まりさと、一人の男がいる。 「やめるわけねーだろカス。とっととその口ん中のお前の子供吐き出せよ。それともその口、二度と開けないようにするか?」 「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」 口を閉じて涙を撒き散らしながら首・・・?身体を振るまりさに平手打ちをしているこの男は、 先程のえーりんの飼い主の幼馴染だ。彼は筋金入りの虐待家なのだ。 「喋れ。どうして欲しいのか言ってみろ。子供を吐き出して自分だけは助かりたいのか。 それとも子供を飲み込まざるを得ないような口にさせられて、子供だけは俺の手に触れさせないようにして、あと自分は餓死したいのか」 「ん゛ん゛っ」 どちらに対しても首を振るまりさを見て、にやりと笑った彼は、今度は拳を握り締めて、まりさの顔面を殴りつけた。 「ゆ゛っ!!」 嫌な音と共に、まりさは壁に激突した。その拍子にまりさは横になり、あんよを晒した。 真っ黒に変色している。つまり、このまりさはもう動くことはできない。 つまり・・・まりさのゆん生は、いわゆる『詰み』に嵌ってしまっているのだ。 近づいてくる彼を見るまりさの心に、絶望が広がっていった。 次の日、大きな餡子の塊が入ったゴミ袋が、ゴミに出されていた。 あとがき 結局、全体的にあっさり気味になってしまった。 あと、本当はあの5匹とその子供達も虐めたかったんだけれど途中で飽きたのでこんなんになっちゃいました。 まあ、そんなことより、 何回も地の文とか台詞を書き直してるせいか、書いてる最中「えーりん」の文字がゲシュタルト崩壊した。 byめーりん萌え このSSに感想をつける
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前編 ゆっくり一家と俺の冬 後編 次の日の朝、俺は台所で朝食の用意をしていた。俺一人、食べるだけの分を。台所の窓から差し込む光に、眩しそうに 目を細める。他人が見たら、今の俺はとても清々しい顔をしているように見えただろう。昨日の夜、あのような惨劇を楽しげに 見ていた奴などと思うまい。 あのあと、俺はゆっくり達を丁度いい大きさの籠に閉じ込めると、残りの夕食を一人で食べ、布団を敷いてさっさと寝てしまった。 次の仕置きまでには時間をおくことが必要だったからだ。寝ている最中、時々親ゆっくりの呻き声が聞こえてはいたが、 それでもすぐに寝付けたのは、鬱憤を多少なりとも晴らしたからだろう。おかげで、久しぶりに目覚めのいい朝を迎えることが出来た。 起きた後、倉の中へ食料を取りに行くと、相変わらず、食い荒らされた様子が目に入った。見ていると、昨日の怒りがまた湧き上がってくる。 俺は忌々しげに鼻を鳴らすと、散らかった食べ残しを拾い集めると、いくつか食材を抱えて家に戻り、朝食の準備に取り掛かった。 台所でにいる俺を見て、ゆっくり達がこちらを怯えた様子で見つめてきた。昨日あんな目に合わせたのだから、まぁ無理も無いか。 親のゆっくりまりさの方は相変わらず調子が悪そうだ。まぁ、子供が3匹も体内に入っているのだから仕方ないか。 仔のちびゆっくり達はそんな親を気遣うように、ぴったりと親ゆっくりに体を寄せていた。 忌々しい奴ら。じきに、ゆっくりしていられないようにしてやろう。 俺は包丁を握ると、まな板の上に載った野菜に勢いよく突き立てた。 朝食を作り終え、居間に戻ると、ゆっくり達が期待を込めた目で俺を見つめていた。どうやら、飯を与えてもらえるなどという 甘い期待を抱いているらしい。俺は自分の分の朝食を床に置くと、ゆっくり達に近づく。すると、怯えた様子をみせながらも、 仔ゆっくりは俺に喋りかけてきた。 「ゆっ…おなかへったよ…」「なにかたべさせてね…。」 精一杯の媚びた表情で俺に愛想を振りまく仔ゆっくり。俺は籠を開けると、仔ゆっくり達の目の前に持っていたものを放り投げてやった。 倉の中にあった、ゆっくり達が食い散らかしたゴミだ。 「自分達で食い散らかしたものは、自分達で片付けな。」 仔ゆっくりはそれを見て悲しそうな顔をすると、口々に文句を言い始めた。俺は返事の代わりに地面を勢いよく踏みつけてゆっくり達を黙らせると、朝食を食べようと振り向いた。 だが、その時俺の視界に入ったのは、なんと一匹の仔ゆっくりが俺の朝食に向かってにじり寄って行く光景だった。 こいつっ!! 俺は素早くその仔ゆっくりを捕まえると、怒りのままに手の中で強めに圧迫してやった。握りつぶす一歩手前だ。 「ゆ゛ぶっ、ゆ゛ぶう゛う゛う゛う゛う゛…!!!」 握られたゆっくりは顔が大きくひしゃげる。その目は大きく見開かれ、口から餡子をわずかに吹き出し始めている。 その様子を見た仔ゆっくり達と親が悲しげな絶叫を上げた。 「や゛め゛でえ゛ぇぇ!!」「ばな゛じであ゛げでぇぇ!!!」 俺は手の中に仔ゆっくりを握ったまま、親ゆっくりの元へ荒々しく近づいていき、手の中のゆっくりを突きつけた。 「人の物を勝手に横取りするということはどういう事か!まだ判っていない奴がいるようだな!!」 既に親も仔も、完全にガタガタと震え、涙を流して怯えきっていた。俺はゆっくり達に手の中がよく見えるようにし、言い放った。 「よく見ていろよ…!!」 そしてそのまま、手の中にいる仔ゆっくりに勢いよく齧りついてやった。 「びゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 齧られた仔ゆっくりが凄まじい断末魔の叫びを上げた。まだ生まれて間もない仔ゆっくりの餡はかなり甘く、しっとりとしていた。これは旨い。普通の饅頭とは比べ物にならない味だ。里の連中はよくゆっくりを捕まえて食べているらしいが、わかる気がする。 久々の甘味に植えていた俺は、手の中で白目を剥いている仔ゆっくりを貪り食った。 「や゛め゛でえ゛ぇ!!どうじで、どうじでぞん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛ぉぉ!!!」 親ゆっくりはこれ以上ないというくらいに体を怒りに震わせ、涙ながらに俺に突進してきた。俺が親ゆっくりの前に足を差し出してやると、 勢いづいた親は自分から俺の足に突っ込み、もんどりうった。苦痛の表情を浮かべる親ゆっくりの目の前に、俺は既に帽子と一部の皮だけになってしまった仔ゆっくりの残骸を置いてやった。 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ……」 最早見る影も無くなってしまったわが子に、親ゆっくりはただ俯いて涙を流していた。俺はそんな親ゆっくりを見て満足すると、ゆっくり達に背を向けて囲炉裏の傍に戻った。そして少し冷めてしまった朝食を口に運んだ。 昼時になり、また俺は食べかけのゴミをゆっくり達に差し出した。また同じ食事を出された仔ゆっくり達はひどく落ち込んだようだが、先ほどの見せしめが効いたのか、文句一つ言わずにゆっくり食べ始めた。親ゆっくりは身動き一つせず、ただ仔ゆっくり達がゴミを食べ漁るのを呆然と見つめているだけだった。時折、短く「ゆっ、ゆっ」と呻いていた。 もしこの場に他の誰かがいたら、親ゆっくりは目の前でわが子を食べられてしまったショックで、おかしくなってしまったと思い込んだだろう。 だが、そんなことより遥かに異常な事態が親ゆっくりの体に起きていることを俺は知っていた。 「ゆ゛!ゆ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」 丁度俺が、自分の昼飯を半分程食べた頃だろうか。突然親ゆっくりが跳ね起き、半開きの口から涎を垂らしながら体を痙攣させ始めた。 「ゆ、ゆっくり!?」「だいじょうぶおかあさん!?」「ゆ、ゆっくりして!!」 親の奇妙な行動に驚いた仔ゆっくりは、成す術なくおろおろするばかりだった。その間にも親ゆっくりはのたうち回り、口から泡と餡子を撒き散らす。よく見ると、親ゆっくりの顔の中で、何かが蠢いている。そしてその度に、親ゆっくりがもがき苦しんでいた。 異物の正体は、昨日親ゆっくりの体内に閉じ込めた仔ゆっくりだった。身を焦がす熱から何とか逃れたものの、昨日の夜から今日の昼まで、 当然何も食べていなかった。いつこの狭い空間から出られるかもわからない。空腹と絶望にあえぐ仔ゆっくりの目の前にあるのは、 親ゆっくりの体内の餡子だった。 生き延びるために、必死で餡を貪る仔ゆっくり達。そしてそれが親ゆっくりに、体内からじわじわと食われていく激痛として伝わっているのだ。 「ひぎい゛い゛い゛い゛い゛!!!!」 「お゛があ゛ざん゛ん゛ん゛!!」 俺は手に持っていた茶碗を床に置くと、親ゆっくりに近づいていった。そして、暴れないように押さえつけると、親ゆっくりに一つ選択をさせてやった。 「このままだとお前は死ぬぞ?子供か自分か…どちらか残しておきたいほうを選びな。」 その言葉を聞いて、しばらく親ゆっくりは悶えるのを止め、大人しくなった。目からは大量の涙が溢れ、 口はこみ上げてくる悲鳴を押し殺すかのように堅く閉じられていた。だが、しばらく時間が経つにつれ、体が震えだし、口の端から泡が漏れ出す。 子供を潰したりして殺すまいと必死に耐えているのだろうが、いつまで続くものか、見物だな。 俺は昼食の残りを頬張りながら、その様子を見守っていた。 しかし、幕切れは意外に呆気ないものだった。数分もしないうちに、親ゆっくりが何かに弾かれたように飛び上がり、奇声を上げながら物に、床に、壁に体を叩きつけ始めた。 「ぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!」 顔が潰れて歪もうが、口から餡子が漏れ出そうが、親ゆっくりは止まらなかった。仔ゆっくり達は暴れる親に押しつぶされないように、部屋の隅で固まって泣いていた。 ようやく親ゆっくりの暴走が収まる頃には、部屋の中は散々な状態になっていた。そこら中に餡子が飛び散り、物は倒れ、囲炉裏の灰は撒き散らされていた。壊れ易い壷のようなものが無かったのが幸いだ。 部屋の中央では親ゆっくりが憔悴しきった様子で動かなくなっていた。その体はあちこちが凹み、破れ、襤褸雑巾のようになっていた。かろうじて体を上下させているところを見ると、死んではいないようだ。 子供より自分をとったか。まだ犬や猫の方がましだな。 部屋の中の惨状を、笑いを浮かべながら見回していると、餡子に混じっていたあるものが目に入った。 それは最早原型を留めぬまでにひき潰された仔ゆっくりの死骸だった。一匹分しかないところを見ると、残りは体内で死んでいるのだろう。 俺はその残骸を親ゆっくりに投げつけて、一言言ってやった。 「生還おめでとう。」 親ゆっくりからは、何の反応も返ってはこなかった。 俺はそれからというもの、ゆっくり達に一切食事を与えなくなった。ゆっくり達は、何日かの間、食べ残したわずかな野菜の切れ端、 肉の破片などを家族同士で分け合い、必死に飢えを凌いでいた。 親ゆっくりは、何とか気力で生きているという有様だった。弾力のあった皮膚がひびわれ、顔からは生気を失っている。 ほとんど動くことをせず、仔ゆっくりが食べかけを持っていったものを弱弱しく食べるだけであった。 ゆっくり達は、確実に衰弱していった。 そんなある時、一匹の仔ゆっくりが空腹に耐え切れず、食べ残しを全て食べてしまうことがあった。 「ゆっ…ず、ずるい!!」「はやく吐き出してね!!」 他のゆっくり達が、一匹の仔ゆっくりを責め始める。 だが、口の中に入れた食べ物をなかなか吐き出さない一匹に、仔ゆっくり達の怒りと疲労がついに限界に達した。 「ゆっくりできないやつは、ゆっくりしね!!」 仔ゆっくりの一匹が体当たりをしかけたのを皮切りに、他のゆっくり達が一匹を取り囲んで攻撃し始めた。 「ゆ゛ぎゃっ!!ゆ゛っぐり、ゆ゛っぐりやべでぇぇ!!」 攻撃されている一匹が涙を流しながら必死に助けを乞うが、他のゆっくり達は攻撃を止めない。 「ゆ゛ぶぇっ!!!」 そしてついに、体の大きめの仔ゆっくりが上から踏みつけた時、下敷きにされた仔ゆっくりは口から餡子を吹き出して動かなくなった。 動かなくなった一匹を見て他の仔ゆっくり達は、逃げるようにその場から離れていった。潰れた一匹は、飛び出た餡子もそのままに放置された。 憐れだな、と俺は思った。こいつらは自分の身が危なくなると、あっさりと仲間を捨てる。それが家族という絆でつながれていても、だ。 所詮こいつらにとって家族というものは、その程度のものなのだろう。 部屋の隅に打ち捨てられた自分達の仲間だったものに、最早目を向ける奴もいなくなった。 やがて夜になり、仔ゆっくり達は体を動かしたことの疲れからかすぐに眠ってしまった。 もっとも、その体力は仲間の命を奪うために消費されたものであったが。 俺も布団を敷いて、眠ろうと目を閉じる。 すると、部屋の中を何かが這いずる音が微かに俺の耳に聞こえてきた。薄目を開けて辺りを伺うと、親ゆっくりが憔悴しきった体を引きずって動いているのがみえた。親ゆっくりはそのまま、昼間死んだ仔ゆっくりの元へと向かう。そして、辿り着いたと同時に親ゆっくりは仔ゆっくりに顔を近づけた。 俺は笑みを浮かべながら再び目を閉じ、眠りについた。暗闇の中、仔ゆっくりの寝息と何かを咀嚼するような音だけが聞こえていた。 そして次の日の朝。目を覚ますと、昨日潰れゆっくりが放置されていた場所には何も無かった。 いよいよ仕置きも大詰めだな…。 俺はいつものように朝食を作り、居間で食べ始めた。勿論、ゆっくり達には与えない。一人で黙々と箸を進めていると、数匹の仔ゆっくり達が朝食をじっと見つめていることに気がついた。俺はそれを無視し、ゆっくり達から食器を遠ざける。泣きそうな顔をする仔ゆっくり達。 そのとき、親ゆっくりが一匹の仔ゆっくりの後ろに近づいた。その姿は、異様な雰囲気を放っている。 仔ゆっくりが何事かと振り向く間も無く、 そのまま親ゆっくりは仔ゆっくりの頭を喰いちぎった。 「ぴぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 一拍遅れて響く凄まじい悲鳴。頭の半分を喰いちぎられた仔ゆっくりは、白目を剥いて激しく痙攣し始めた。 親ゆっくりは、そんな様子を意に介さず、仔ゆっくりの餡子を味わって食べていた。 「ハァハァ…めっちゃうめぇ…めっちゃうめぇコレ…」 残っていた仔ゆっくり達は、何が起こったのか理解できていなかったらしい。皆それぞれ目を見開き、絶句している。 しばらくして、親ゆっくりが仔ゆっくりを食べ終えたようだ。その目は、妖しく狂気の光を宿していた。 自分達の方を振り向いた親ゆっくりを見て、緊張の糸が切れたかのように仔ゆっくり達が逃げ惑い始める。 「いやあああああああ!!!」「お゛があざん゛だべな゛い゛でぇぇ!!」「ゆ゛っぐりぃぃぃぃ!!」 蜘蛛の子を散らすように仔ゆっくり達が逃げる。しかし、空腹のあまり長い距離を跳ねることができないのか、仔ゆっくりの逃げる速度は遅い。親ゆっくりはゆっくり這いずりながらも、確実に仔ゆっくりを追い詰めていった。 仔ゆっくりはそれでも、少しでも親から逃げようと姉妹同士で押し合って逃げる。そのとき、一匹の仔ゆっくりが他のゆっくりに潰され、その場に取り残された。 「ゆ゛、ゆ゛っぐり゛じでぇぇ………!」 どうやら、潰されたにも拘らずまだ息があるようだ。しかし、もう跳ねて逃げる気力も残っていないらしい。 壁際に追い詰められた仔ゆっくりが涙を流しながら必死に助けを嘆願するも、その声は飢えで理性のタガが外れた親ゆっくりにはもはや届いていないようだ。 そのままじりじりと隅に追いやられ、成す術なく親ゆっくりの餌食となる。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 仔ゆっくりの餡子が、皮が、悲鳴が、親ゆっくりの口の中へと飲み込まれていく。残りの仔ゆっくり達は、その一部始終を見ていた。 力尽きた者から、食べられる。 それを悟った仔ゆっくり達は、ついに仲間内で争いを始めた。自分の代わりに、誰かを犠牲にして生き延びようと考えたのだ。 地獄絵図が、始まった。 仔ゆっくり達はお互いを攻撃しあい、弱った個体から集団で袋叩きにしていく。親ゆっくりは弱った子供から容赦なく喰らい、 また仔ゆっくり達を追う。 固く結ばれた家族の絆は、跡形も無くなってしまった。そこにあるのは、絶望と憎悪と恐怖。 仲睦まじい親子の光景は、もう見られない。見ることが出来るのは、自分だけが生き残ろうとする者達の、醜い争い。 一つ、また一つと、悲鳴とともに仔ゆっくりの命が消えていく。たくさんいた兄弟は、もう既に親ゆっくりに食べられてしまい、 残っているのは二匹だけになっていた。 二匹は、最後の生き残りになろうとくんずほぐれつ争っていたが、親ゆっくりが静かに近づいてきたことに気づくと互いに正反対の方向に逃げ出した。 親ゆっくりは、二手に分かれた子供のうち、そのうち一匹に狙いを付けて追い詰めていく。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!ごな゛い゛でぇぇ!!!」 必死に逃げる仔ゆっくりは、近づいてくるそれを最早親ではなく、敵としか見ていなかった。それは親ゆっくりも同じことで、 目の前で逃げる仔ゆっくりは、親にとって単なる餌でしかなくなっていたのだ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 絶叫とともに仔ゆっくりが親ゆっくりに食べられ、ついに立った一匹の仔ゆっくりだけが残された。仲間を蹴落とし、 家族の絆を捨てて、ようやく自分一人が生き残ったのだ。 緊張の糸が切れたのか、その場でぺったりと床に伏せて脱力する仔ゆっくり。 しかし、親ゆっくりは止まらない。最後に残った仔ゆっくりを狙って、じわじわと距離を詰めていく。 「ゆゆゆゆっ!?」 自分に危機が迫っていることを感じ取った仔ゆっくりは、迫り来る親から少しでも遠ざかろうと、懸命に跳ねようとしていた。 だが、極度の空腹と疲労で這うことしかできない。後を追う親ゆっくりも這うことしか出来ないが、いかんせん体格が違いすぎる。 小柄で移動できる距離も小さい仔ゆっくりは、どんどん差を縮められていく。 そしてついに、親ゆっくりが仔ゆっくりに追いついた。背後から近づく巨大な気配を感じ、顔を絶望に歪め泣き出す仔ゆっくり。 「い゛や゛あ゛……」 もう仔ゆっくりの体は親ゆっくりの届くところにある。ちょっと本気を出して跳躍すれば、仔ゆっくりの命が散らされるのは明白だった。 だが親ゆっくりが、仔ゆっくりに飛び掛ることは無かった。苦しそうな顔をしてげっぷを一つ吐くと、そのままゆっくりし始めたのだ。 そりゃあ一度に5,6匹も仔ゆっくりを食べたんだ、体も重くなるだろうな…。 ここまでずっと囲炉裏の傍で見守っていたが、最後の仕上げをするため、俺はゆっくり達に近づいていった。 仔ゆっくりは、親ゆっくりが動かなくなったことをいいことに、少し離れた場所で親ゆっくりを罵倒していた。 「ずっとそこでゆっくりしていってね!そのままゆっくりしね!!」 さっきまで命の危機に晒されていたというのに、もう顔には余裕の色を見せている。大した度胸の持ち主か、そうでなければ命知らずの莫迦である。 俺は手を伸ばすと、暢気に背後を見せている莫迦を苦も無く捕らえた。 「ゆっ!ゆっくりはなしてね!!」 俺の手の中で必死にもがく仔ゆっくりだったが、親ゆっくりの元に連れて行かれていることに気づくと、再び恐怖に身を震わせ始めた。 「は゛な゛じでえ゛え゛!!だべら゛れ゛だぐな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!」 親ゆっくりは満腹のためか、しばらく苦しそうな顔でゆっくりしていたが、仔ゆっくりを連れた俺が近づくと再び獲物を狙う狩人の目をみせる。 「ほおら、感動の親子ご対面だ。」 そういって、俺は手の中の仔ゆっくりを、親ゆっくりに向かって放り投げた。 「や゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 絶叫と共に綺麗な放物線を描いて飛んだ仔ゆっくりは、そのまま着地点となる親ゆっくりの口の中に吸い込まれ、消えていった。 最後の仔ゆっくりを食べ終えると、親ゆっくりは俯いて体を奮わせ始めた。 子供を食べてしまった事を後悔して、泣いているのか…? そう思って近づいてみるが、親ゆっくりの顔には濡れた後すら無く、 「うふ、うふふ…うふふふふ……」 ただ生気の無くなった虚ろな目をして、笑い続けていただけだった。 親ゆっくりは、完全に壊れてしまった。もう自分の子供と餌を区別することすらできないほどに。 さて、そろそろ仕上げだ。 俺は台所に向かうと、まな板の上に乗せてあった包丁を手に取って戻る。そしてゆっくりの背後に静かに立った。 「どうだ?旨かったか?自分の子供の味は?」 親ゆっくりは答えない。 「味わったか?餓死一歩手前の絶望と恐怖の味を?」 親ゆっくりは答えない。 「ゆっくりした結果が、これだ…。」 俺は、吐き捨てるように言った。そのまま、親ゆっくりに近づく。手には包丁を構えて。 「今度生まれてくるときには、もう少しゆっくりすることの意味を考えてみるといい…。もしかしたら、もうちょっとマシな生き方ができるかもしれないな…。」 そして、俺は狙いを定め、包丁を高々と振り上げる。その時親ゆっくりが振り向いたが、その目にはもう恐怖の色は浮かんでいない。 自分の目の前に存在している死を前に、ただうっすらと壊れた笑みを浮かべた。 俺はその表情を見届けると、まっすぐに包丁を振り下ろした。 「ゆっくりしね」 それが、親ゆっくりが聞く最後の言葉になった。 あれから、既に一ヶ月が経った。心配していた食料も、何とかもっている。今回、倉を荒らされた俺が餓死せずに生き延びていられるのは、二つの幸運があったからだ。 一つは、倉を荒らしたのがゆっくりだった事。ゆっくりだったおかげで、上の食料が無事だった上に、栄養価の高い饅頭で食いつなぐことが出来た。 もし鼠に食料をやられていたら、今頃俺は冷え切った家の中で冷たい骸になっていただろう。 もう一つの幸運は、ゆっくりが親子連れだったこと。体が大きく食べる部分も沢山ある親ゆっくりに、生まれて間もなく、皮も中身も新鮮な仔ゆっくり。 もし通常のゆっくりだったら、一ヶ月近くももたせることができたかどうか。 とにかく、今年の冬は、災難もあったが思わぬ収穫も手に入った。ゆっくり達はかなり優秀な食料になることがわかったし、捕まえる方法も簡単だ。 来年は、二体を捕まえて仔作りさせて、新鮮な仔ゆっくりを腹いっぱい食べるのも悪くは無いな。 そんなことを考えながら、俺は額から上を切り取られた親ゆっくりから、もう大分湿気てしまった餡子を掻き出して口に運ぶのだった。 END
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。もはや虐待メインではない。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』13 「ゆっくりこっちだよ!どすはこっちだよ!!」 施設を抜け出すのは簡単だった。 博士として信頼、優待されている娘のおかげで、警備の目はたやすく抜けることができた。 いったん家に帰って身辺を整理し、計画に集中したい、という名目を奴らは信じ、 車さえ提供してくれた。 車で森の中を走る。 助手席には娘の春奈、その膝に私のれいむ。 後部座席では十三匹のゆっくりががなっていた。 「まりささまはまちくたびれたんだぜ!!しーしーするんだぜ!!」 「くそどれいはゆっくりしないでさっさとしてね!!ついたらしんでね!!ごみくず!!」 「とかいはなゆっくりぷれいす!!いなかものはとうぜんゆっくりさせないわよ!!くやしいかしら?ばーか!!」 その声は、人間の感性では聞くに堪えない。 生まれてから一切の躾を受けず、その上人間に迫害を受け続けた。 人間への侮蔑と憎悪が、このゆっくり達から拭い去られることは永久にないだろう。 心の中で、私はこのゆっくり達に詫び続けていた。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私たちに罵声が飛ぶたびに、私のれいむがゆっくり達を必死になだめようとする。 しかし無益とわかると、やがて残念そうにあきらめ、道案内のみに集中するようになった。 あの呪われた施設から、すでに数十キロほども離れている。 向こうではすでに感づかれているだろう。 本来、提供されたのは車だけでなく、運転手もついていた。 送り迎えと言えば聞こえはいいが、ただの監視役だ。 私が変な気を起こさないように監視するためである。 施設から充分に離れたところで、私は後部座席から武器をつきつけた。 数万ボルトを流せる強力なスタンガンは、施設から持ち出したものだ。 ゆっくりを苦しめるための道具だった。 首筋にスタンガンをつきつけられた運転手の男は、 私に促されるまま車を降り、私たちが走り去っていくのを見送った。 街に近いところで下ろしたし、どうせ携帯電話かなにかですぐに連絡するだろう。 男を降ろしてからしばらく後に、 後部トランクに隠していたゆっくり達を引っ張り出した。 大きく成長したゆっくり達は、袋の中にぎゅうぎゅう詰めにせざるをえず、 どうしても騒ぐので、口をテープでふさぐしかなかった。 今、後部座席のゆっくり達が罵詈雑言を叫んでいるのはこのためも大きい。 何日もの準備期間で、春奈がじっくりと根回しをして連中の注意をそらしていたので、 ゆっくり達が監禁されていた部屋の警備は甘かった。 隙をついてゆっくり達を逃がし、車のトランクに詰めるのは造作もなかった。 今、車は人里離れた森の中を走っている。 助手席のれいむの道案内で、目的地ははっきりしていた。 これだけ遠ければ問題ないだろう。 「ゆっくりできるよ!!ゆっくりできるよ!!どすはもうすぐだよ!!」 ドス。 私が探しているのはそれだった。 突然変異で異常に大きくなったゆっくりは(ほとんどがまりさ種である)、 リーダーシップを発揮するようになって、多くのゆっくりを従え、群れのボスとなる。 ドスの統制する群れは行き届いた統制のもと安定した食糧確保が保障されており、 ゆっくりにとっては最上級のゆっくりプレイスとなる。 道案内はれいむがしてくれた。 ドスの発する「ゆっくりオーラ」は、ある程度離れたゆっくりにも影響を及ぼし、 ゆっくりできると感じたゆっくり達はドスのもとに自然と集まる。 なるべく人里離れた道を走っていたが、思ったよりは早く見つかった。 「ゆゆゆっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「くそどれい!!かわいいれいむをおろしてどすのところへつれていってね!!」 「はやくしなさいよ!!ぐず!!のろま!!」 後部座席のゆっくり達が騒ぎ始めた。 彼女たちもドスの存在を察知しているようだ。 私たちは車の中で夜明けを待つことにした。 ゆっくりの住むところには、時として捕食種のれみりゃ種やふらん種が住んでいることがあり、 それらは夜行性で、非捕食種のれいむ種やまりさ種を襲ってしまう。 ドスのところに連れていくにせよ、少なくとも夜のうちは動くわけにはいかない。 「なにとろとろしてるんだぜええ!!まりささまのありがたいめいれいがきけないのかぜえ!?」 「おろしてね!!おろしてね!!ごみくず!!あんこのう!!ゆっくりしね!!」 自分からは一切動こうともせず、後部座席で騒ぎつづけるゆっくり達には正直辟易させられた。 「この子たち、森で生きていけるかな」 春奈がつぶやいた。 人間のもとで、ずっと甘やかされ、その後虐げられつづけてきたこのゆっくり達。 どちらにせよ、自分では何もせず、なにもさせてもらえず、ただされるがままの生活だった。 今、この子たちに自分たちで生きていく力があるだろうか。 それは賭けではあった。 ドスの率いる群れの統率力、指導力に期待するほかない。 群れのルールに従ってさえいれば、ドスの群れは野生にとっては一番の良環境だ。 どちらにせよ、もう人間の元においておけないのは確かだ。 人間への憎悪を溜め込んだこのゆっくり達の世話を人間がしようとしても、互いにいら立つだけだろう。 このゆっくり達の侮蔑と憎悪が、同じゆっくりに向けられないことを祈るばかりだ。 ドスが強者、指導者として上に立ってくれれば大丈夫だとは思うが。 「信じましょう」 私はそう言うしかなかった。 何時間が経っただろうか。 うとうととしはじめていた時、突然強い光が視界に広がった。 車の前方に光るそれは、バイクのヘッドライトだった。 目が慣れるまでに時間がかかったが、 バイクに乗っているその男は知った顔だった。 「長浜圭一……」 長浜圭一はバイクから降りると、車のほうへ歩いてきた。 ぐずぐずしてはいられない。 私もすぐに車から降りると、スタンガンを構えた。 「近づかないで!」 スタンガンを突き付けられ、長浜圭一は両手を上げた。 どうやら丸腰のようだった。他に人がいる気配もない。 「一人で来たの?」 「そうだ」 「どうやってここがわかったの」 「車に発信機がついている。その車でどこへ行こうとすぐに足がつく」 周到な話だ。 心の中で舌打ちをしながら私は言った。 「ゆっくり達を取り返しにきたのね?」 「そうだ。そして須藤春奈博士もね」 「娘は渡さない。娘も、もうあなたたちに協力はしないわ」 長浜圭一が車の中の娘に目をやる。 娘はうなずいてみせた。 「逃げられると思うか?」 「逃げてみせるわよ」 「そのゆっくり達を逃がしたところで、別のゆっくりを使うまでだよ」 「すべてを公表するわ。世間にね。 一般市民たちが、あなたのしていることを聞いてなんと言うかしら? 人を殺したわけでもないゆっくりを使って世論は納得する?」 「さあね」 「あなたがしようとしていることは、人類の歴史上最悪の迫害よ。 あなたたちは平気らしいけど、普通の人間がその罪悪感に耐えられるものじゃないわ!」 「ゆっくりを苦しめるのが、そんなに嫌かい」 愚問だ。 「人の言葉を使う、人間以外では唯一の生き物よ。 価値観は多少違っても、共存の道があるはず、共に生きるべきよ!」 「あんたは、ゆっくりが友達だとでも言う気か?」 「そうよ。人間は、初めて対話できる別の生物と出会ったのよ。 その奇跡を、あなたたちの悪意と私欲で汚させはしないわ。世間に判断してもらいます」 「同じ言葉を使う、ただそれだけでそこまで感情移入できるとはね」 「それだけじゃない。私はずっとゆっくりと向き合ってきました。 子供のころからゆっくりは友達だった。 ゆっくりブリーダーとして、何千匹のゆっくりと対話したこともある。 あらゆる個性のゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験して、仲良くする方法を学んできたわ。 あなたに何がわかるの? あなたたちなんかよりもずっと、私はゆっくりをよく知ってるのよ!!」 両手を上げたまま、長浜圭一は肩をすくめた。 「それはご立派なことで」 「本当に何も持たないで来たの?」 「そうだよ」 「私を説得できると思っていたわけ?」 「どうかな。正直わからない。 もしかしたらあんたの話が聞きたかったのかもしれない」 「話すことなんかないわ。後ろを向きなさい」 長浜圭一に背中を向けさせ、その背中にスイッチを切ったスタンガンを押し付けた。 「少しでも妙な動きをしたらスイッチを入れるわよ」 「わかった」 「春奈、出てきて」 車から出てきた春奈に指示する。 「れいむも一緒に連れてきて。 それから、あのゆっくり達をまた袋に入れてちょうだい」 「入れるの?」 「あの子たちにこの男を見せたら刺激させてしまうわ」 「わかった」 「ゆゆっ!!だすんだぜ!!だすんだぜえええ!!」 「ぐぞどれいいい!!ごみぐずうううう!!だぜえええええーーーーっ」 「とかいはなありすになんてことするのよおおおお!!!しね!!しね!!いなかものおおおお!!」 大きな袋に再びつめられ、文句を言うゆっくり達。 「ごめんなさい。後で出してあげるわ」 袋の口を縛ると、長浜圭一に持たせた。 これだけ成長したゆっくりが十三匹というのは相当重い。 一人だけでは辛いようなので、結局は私と春奈が加わり、三人で運ぶことになった。 中で暴れているのでさらに大変だ。 長浜圭一に先を歩かせ、森の中に入りこむ。 夜中の行軍になったが、人間がついていれば捕食種のゆっくりを撃退するのはわけない。 「ママ、森に行くの?」 「そうよ。あの車に乗っているかぎり足がつくわ。 この子たちを森の中に離して、そのあとあの車でなるべく遠くに逃げましょう」 「この人が群れの場所をバラしちゃわない?」 「そうね」 私は手荷物の中からハンカチを出し、長浜圭一に目隠しをした。 「あなたはこのままで歩きなさい」 長浜圭一は抵抗しなかった。 結局、これが間違いのもとだった。 「こっちだよ!!こっちだよ!!ゆっくりできるよ!!」 朝が近づいてきたころ、れいむがさらに声をはりあげた。 いよいよドスが近いようだ。 「あなたたちでも歩いていける?」 「ゆゆっ!れいむでもすぐにつくよ!!ゆっへん!!」 「そう。なら、ここで放しましょう」 袋から出されたゆっくり達は、堰を切ったように叫んだ。 「よくもまりささまをとじこめたなあぁ!!しね!!いますぐあんこはいてしねぇ!!」 「ぐずぐずしないでとっととどすのところにつれていってね!!それからしんでね!!」 「ゆっくりぷれいすがすぐそこよ!!いなかもののどれいはさっさとえすこーとしなさいよ!!ぐず!!」 口々に罵り、私に体当たりをしてくる。 幸い、薄暗い中で長浜圭一には気づいていないようだ。 目隠しをしているのも識別を妨げているのだろう。 「自分たちで歩いていくのよ」 私が言うと、ゆっくり達は文句を言った。 「はあぁぁああ!?ありすが!?ありすたちにあるかせるのおぉぉ!? ばかなの!?ほんもののばかなの!?ぶっさいくなかおよね!!」 「まりささまがめいれいしてあげてるんだぜぇ!!ありがたいとおもわないのかだぜぇ!?」 「ばかはかんがえなくていいよ!!れいむのいうことをきくんだよぉ!!」 やはり、ずっと閉じ込められたせいで積極的に動かなくなっているようだ。 それでもこれだけ元気なら、すぐ側のドスのところには行けるだろう。 私は背を向け、歩き出した。 「まつんだぜぇ!!どれいのしごとをほうきするのかだぜぇ!?」 「かわいいかわいいれいむがめいれいしてるんだよぉ!?たちばかんがえてねぇ!!」 ドスのところに、私が行くわけにはいかない。 人間の姿を見せると警戒させてしまう。 善良なドスほど、ゆっくりオーラは強くなる。 あれだけ遠くかられいむが察知できたなら、よほどよくできたドスだろう。 このゆっくり達はすでに野生の食べ物に慣らしてあるし、問題なくやっていけると信じるしかない。 「帰りましょう」 長浜圭一にそう声をかけ、二人で空き袋を持った。 そうして帰ろうと振り向いたところで、突然の衝撃が襲った。 全身を襲う痛みで、しばらくは動けなかった。 呻きながら、苦労して周囲を見渡す。 辺りは真っ暗だったが、頭上を見ると、2メートル以上はあろうか、 高みに穴が開いていて、そこから白みはじめている空が見えた。 状況を理解するのに少しかかった。 どうやら地面に穴が開いていたらしい。 目隠しをしたままの長浜圭一が足を踏み外し、 一緒に袋を掴んでいた私も、それに引っ張られて穴の中にずり落ちたのだ。 それなりに広い穴で、深さは3メートル近く、広さも3メートルはありそうだった。 自然にできたものにしては、入口の穴が内部に対して狭い。 どうやら誰かが掘った穴のようだ。 恐らく、ゆっくりが掘ったものだろう。 穴の内壁は壺状になっており、上方にかけてすぼまっている。 これではとてもよじ登れそうにはない。 全身を打ちつけ、声を出すのにも苦労したが、 なんとか長浜圭一を見つけ、声をかけた。 「大丈夫?」 長浜圭一はうずくまって呻いている。 その足に触れると、びくりと震えて悲鳴を上げた。 「触るな!」 見ると、長浜圭一の左足が微妙におかしな方向に曲がっていた。 着地の衝撃で折れたらしい。 「大変……ごめんなさい」 「………目隠しを取ってもいいんだろ」 「あ、ええ」 自分で目隠しのハンカチをはぎ取り、長浜圭一は穴を見渡してから穴の内壁にもたれて溜息をついた。 「あんたが俺をここに落としたのか?」 「いいえ、違うわ。足を踏み外して落ちてきたみたい」 「お母さん!」 「おねえさん!!どこ!?ゆっくりしていってね!!」 上から声がする。 見上げると、春奈がれいむを抱えてこちらを見下ろしていた。 「お母さん、大丈夫?」 「私はなんとか大丈夫よ。でも、この人の足が折れたようなの」 「大変じゃない。どうしよう……電話で助けを呼ぶよ」 「駄目よ、春奈」 「なんで!?」 「誰に助けを呼ぶの?住所もわからないのに。 捜索を待ってたら、あの連中に捕まっちゃうわよ」 「でも、あたしじゃ助け上げられないよ」 「どすならたすけてくれるよ!!」 れいむが叫んだ。 「どすはゆっくりしてるよ!!れいむがたのめば、きっとおねえさんをたすけてくれるよ!!」 果たしてそうだろうか。 ドスの群れに関わりたくはなかったが、今となっては命と、ゆっくり達の未来がかかっていた。 一刻を争う状況でさえなければ、人間の助けを待つのだが。 それでも、どのみちここにいればゆっくりに見つかるかもしれない。 この穴はゆっくりが掘った公算が高かった。 「くそどれいはなにしてるんだぜ!?さっさとあがってまりささまをはこぶんだぜぇ!!」 「いいきみだね!!ばぁ~か!!ばぁぁ~~か!!べろべろばぁ~♪」 「とってもとかいはなあなね!!にげだしたいなかものにはおにあいよ!!」 あのゆっくり達が穴の淵から見下ろして叫んでいた。 あの連中に捕まれば、このゆっくり達は地獄に叩き落とされ、人間は拭えない罪を背負うことになる。 選択の余地はなかった。 「春奈。ドスを探してくれる?」 「お母さん」 「ゆっ!どすはすぐそこだよ!!あんないするよ!!」 「ドス達にお願いしてみて。なにか太いロープか蔦をを下ろしてもらえればいいわ。 ここから抜け出せれば、あとはその子達を預けて、車で町へ行ける」 「わかった。待っててね」 春奈はそう言うと、れいむを抱えたまま姿を消した。 他のゆっくり達も、しばらく私たちを罵っていたが、 やがてドスまりさのオーラに惹かれたのだろう、春奈に呼ばれて穴の淵から退いていった。 ドスは助けてくれるだろうか。 私も、ドスゆっくりに会ったことはない。 ドスにも善良なドス、悪いドスがいて、 田舎のほうだと、悪いドスが人里に下りてきてドススパークをたてに「きょうてい」を結ぶことを要求することもあるという。 人里から離れたこのあたりのドスが、人間に対してどういう認識を持っているか未知数だった。 「足は大丈夫?」 「……痛い。叫び出したいぐらいだ」 長浜圭一は辛そうだった。 「接ぎ木ができればいいんだけど。何もないし、暗くて」 「俺のことは気にするな。あんたとは敵同士なんだ」 「たとえ敵でも、怪我人を放っておくほど冷酷にはなれないわ。あなたと一緒にしないで」 「…………」 「痛む?」 長浜圭一は笑った。 「面白いな」 「何が面白いのよ?」 「俺があのゆっくり共にやろうとしていることを考えれば、この程度で痛がってちゃお笑いだよ」 「別に痛がっていいわよ。絶対にやらせないもの」 「いい人だな、あんたは」 「皮肉?」 「いや。本心から言ってる。あんたはいい人だ。好きにはなれないが」 意外に素直なことを言うかと思えば、やはりねじくれた男だ。 上から声が降ってきたのは、完全に朝になったころだった。 恐らくは朝になり、夜行性の捕食種が巣に帰るのを待っていたのだろう。 「ゆゆっ!!ほんとににんげんさんがいるよ!!」 「わかるよー、おちちゃったんだねー」 「ちーんぽ!!」 大小さまざま、数十匹、あるいは百匹以上のゆっくり達が穴の淵を取り囲んでいるようだった。 れいむ種、まりさ種、ありす種、そしてちぇん種やみょん種といった希少種もちらほら見受けられる。 「お母さん!大丈夫?」 「おねえさん!!ゆっくりしていってね!!どすがくるからゆっくりできるよ!!」 春奈と私のれいむが姿を現した。 「ありがとう。呼んで来てくれたのね」 「ドスまりさに事情を話したの。来てから考えるって。いま来るわ」 果たして、大きな足音が聞こえてきた。 巨大なものが、ゆっくりと地面を這いずってくる音。 「ゆゆっ!!」 重低音の声とともに、巨大なドスまりさがぬっと顔を見せた。 この穴の底からでは目測しにくいが、身長3メートル以上はあろうか。 「ゆっ、ほんとだね!にんげんさんがおちてるよ!! ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!」 私は笑顔で挨拶を返した。 さん付けで呼んでくれ、最初に挨拶をしてくれた。期待していいかもしれない。 「初めまして、ドスさん。とってもゆっくりした群れね」 「ゆっ?ゆっへん!!ドスのむれはゆっくりしてるよ!! おねえさんはみるめがあるね!!とくべつにみていってもいいよ!!」 素直なドスらしく、胸を反らしていい気分のようだ。 春奈がドスまりさに対して訴える。 「ドス、お母さんを助けて!」 「ゆっ?どうすればいいの?」 「ロープとか、なにか丈夫な蔦とかない?」 「ゆゆ?う~ん、あったようなきもするよ。みんな、つたさんをさがしてみてね!!」 「ゆっゆ~!!」 群れのゆっくり達が声を上げる。 どうやら助けてもらえそうだ。 そう安心しかけたところに、制止する声が響いてきた。 「むきゅ!どす、ちょっとまつのよ!」 特徴のある鳴き声は、ぱちゅりー種のものだった。 声量は小さかったが、鋭いその声に群れが一斉に注目した。 「むきゅ、にんげんさんはゆっくりできないわ!!」 「ゆゆっ?どういうこと?」 「ぱちゅりー、ゆっくりせつめいしてね!!」 ドスまりさの傍に寄り添うようにしているぱちゅりーが、群れに向かって講義をはじめた。 尊敬されている個体らしく、ドスを含めた群れはその声に耳を傾けている。 善良ではあるがどこか緊迫感のないドスを、知識に優れるぱちゅりーが参謀として補佐している。 恐らくはそんなところだろう。 これはよく見られるケースで、ドスが一人で何もかも取り仕切る群れよりも、 むしろこうした形式の群れのほうが成功しやすいようだ。 「もりのけんじゃであるぱちゅりーのことばをよくききなさい、むきゅ! にんげんさんはゆっくりできないの。 このむれはにんげんさんのむれからはなれているから、 にんげんさんをしらないゆっくりのほうがおおいとおもうけど、 ほかのところからうつってきたゆっくりのなかには、にんげんをみたことがあるゆっくりもいるはずよ」 「ゆっ!!まりさはみたことがあるよ!!」 「ちぇんもみたことがあるんだねー、わかるよー」 「れいむもにんげんさんをみたよ!!ゆっくりできなかったよ!!」 数は少なかったが、何匹かのゆっくりがぱちゅりーに同意していた。 「にんげんさんは、まったくゆっくりできていない、きけんでかとうなせいぶつよ。 おやさいさんをひとりじめしたり、 おなかをすかせているゆっくりにあまあまをあげないでむししたり、 ゆっくりのおうたをきいたのにおれいをしなかったり、 あとからやってきたくせに、ゆっくりぷれいすをよこどりしたりするわ、むきゅ! にんげんさんは、めにうつるものはなにもかもじぶんのものだとおもっているやばんないきものなのよ!」 ぱちゅりーの演説に、移住組らしきゆっくり達が声をあげる。 「そうなんだぜ!!まりさはおやさいさんをよこどりされてつまをころされたんだぜ!!」 「れいむはおうたをうたってあげたのにあかちゃんをつぶされたよ!!」 「ありすはにんげんをかってたわ!! ゆっくりぷれいすでにんげんのめんどうをみてあげてたのに、 ありすがとかいはなおよめさんをつれてきたとたんにうらぎって、 ゆっくりぷれいすをのっとってありすをおいだしたわ!!」 人間と接したことのある移住組のゆっくり達の話を聞いて、 群れのゆっくり達は口ぐちに悲鳴をあげた。 「ひどすぎるわぁぁ!!にんげんはぜんっぜんとかいはじゃないわああぁぁ!!」 「わからないよ!!にんげんさんはわからないよー!!」 「どぼじでぞんなびどいごどがでぎるのおおぉぉぉ!!?」 「ゆゆっ!!にんげんさんはゆっくりできないんだね!!」 群れを見渡してドスまりさが叫んだ。 「どすすぱーくをうつよ!!ゆっくりできないにんげんさんはしね!!」 「ま、待って!!」 なんて事だ。 こんなところで殺されてしまうのか。 やはりドスのいる群れに不用意に近づくべきじゃなかった。 「ゆっくりまってね!!」 その時、さらに制止の声が響いた。 ドスまりさの前で飛び跳ねているのは、見間違えようもない、私のれいむだ。 「ゆゆっ!!よそもののれいむはだまっててね!!」 「ゆっくりきいてね!!おねえさんはとってもゆっくりできるんだよ!! おねえさんはずっとれいむにゆっくりさせてくれたよ!!ころさないでね!!」 「ゆぅぅ!?」 「みんなもきいてね!!にんげんさんはゆっくりできないにんげんさんばかりじゃないよ!! おねえさんみたいに、ゆっくりをゆっくりさせてくれるにんげんさんもいるよ!!」 群れは静まり返った。 余所者のれいむの言葉だったが、たしかに効果があったようだ。 それはおそらく、れいむが丁寧な手入れをされている美ゆっくりだったからだろう。 美人に弱いのは人間もゆっくりも同じようだ。 「むきゅ!どす!まようことはないわ、どすすぱーくを!」 「ゆゆっ!?でも、このれいむはすごくゆっくりできるよ!!」 「む、むきゅう……!」 会話になってないように聞こえるが、ぱちゅりーは返答に詰まっている。 ゆっくりできている、ということはすなわち説得力につながるらしい。 「ゆっへっへ!!どす!!どすならはやくまりささまをゆっくりさせるんだぜ!!」 「ゆふぅ、ゆふぅ……ありすはつかれてるのよおお!!なんであるかせるのおお!!」 また新しい声が加わった。 聞きおぼえのあるその声は、施設から連れてきたあのゆっくり達のものだった。 遅れてやってきたのは、自分で跳ねるのは久しぶりで思うようにいかないからだろうか。 「ゆゆっ!ようやくついたよ!!どす、はやくにんげんさんをころしてね!!」 施設のゆっくり達の声が聞こえる。 やはり、この子達は私たちが助かることは望んでいないようだ。 「むきゅ!あなたたち、ぱちゅりーのしつもんにこたえなさい!」 「ゆ!?なんでもきいてね!!」 「このにんげんさんたちはゆっくりできる!?」 「ゆゆっ!!もちろんゆっくりできな――」 改めて穴をのぞき込み、私たちの顔を見た十三匹のゆっくり達は眼をむいた。 「ゆぅあああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!?」 「むっきゅうぅ!?どうしたの!?きゅうにさけばないでね!」 「なんでおまえがここにいるんだぜえええええぇ!!?」 その子達が見ているのは、明らかに長浜圭一のほうだった。 昨晩は目を隠していたのと、宵闇であること、穴の底の暗がりだったために判別できなかったが、 太陽の下、いまや長浜圭一の正体は文字通り白日のもとにさらされていた。 自分たちをさんざん苦しめた長浜圭一を前にして、ゆっくり達はいきり立った。 「しね!!しね!!しね!!しね!!ひきょうなにんげんはいますぐくるしんでしねぇぇ!!!」 「かえせ!!かえせ!!れいむのあかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなぁぁぁぁ!!!」 「よくもよくもよくもありすのとかいはなぺにぺにをいじめたなああぁぁーーーーーーっ」 悪罵を投げつけられながら、長浜圭一はどこか疲れた無表情で上を見上げていた。 「どういうことなの……」 十三匹の恐ろしい剣幕に、群れのゆっくり達はたじろいでいた。 「む、むきゅ!ぱちゅりーにせつめいしてね!」 「ゆっ!!このくそにんげんをいますぐころしてね!!」 「きゅうにいわれてもわからないわよ!このにんげんがなにをしたの!?」 「ゆっくりせつめいするよ!!れいむたちはとってもかわいそうなひがいしゃなんだよ!!」 十三匹のゆっくり達は群れに向かって、 自分たちがあの施設で長浜圭一にされていたことをすべて話した。 ゆっくりの、しかも感情的な説明なのでなかなか要領を得なかったが、 長浜圭一が恐ろしい人間である、という認識自体はたやすく群れに浸透した。 群れのゆっくり達は悲鳴をあげ、憎悪の声をあげはじめた。 「ゆうううぅぅぅ!!ゆっくりできないいいいいいぃぃ!!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ころせぇぇ!!ゆっくりしないでころせえええーーっ!!」 最悪の事態になりつつあるようだった。 私はなんとか弁解したかったが、火に油を注ぐだけだろう。 本来、野生のゆっくりが人間の論理に耳を傾けることはまずない。 どうすべきか迷っているうちに、ドスまりさが再び口を開いた。 「こんどこそどすすぱーくをうつよ!!むれのみんなはゆっくりはなれてね!!」 「やめてね!!やめてねぇぇ!!」 私のれいむが必死に止めようとして、ドスまりさの髪飾りに捕まっていた。 「ゆゆっ!れいむははなれてね!!」 「はなれないよ!!れいむのおねえさんをころさないでね!! おねえさんはこのまりさたちにはなにもしてないよ!! おねえさんがまりさたちをたすけだしてここにつれてきてくれたんだよ!!」 「そうなの?ゆっくりこたえてね!」 ドスまりさに問われて、施設のゆっくり達は飛び跳ねながら答えた。 「ゆっ!あのおねえさんはどれいなんだぜ!!」 「れいむたちがめいれいしてここまでつれてこさせたんだよ!!」 「でもにげだそうとしたわ!!やくにたたないいなかもののかちくだからころしてもいいわよ!!」 「ちがうでしょおおぉぉ!?おねえさんがいなかったらにげられなかったでしょおおぉ!!」 私のれいむが訂正しようとするが、施設のゆっくり達は悪びれる様子もない。 「にんげんさんがかわいいれいむをたすけるのはあたりまえでしょおおぉ!?」 「まりささまのみりょくにめろめろになったからたすけたんだぜ!! だからこれはまりささまのちからなんだぜぇ!!」 しばらく言い争っていたが、やがてドスまりさが言った。 「どすはゆっくりわかったよ!! あのおにいさんにどすすぱーくをうって、あのおねえさんをたすけるよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「かんどうてきなおおおかさばきだよ!!さすがどすだね!!」 迷っていた群れは、解決策を打ち出したドスまりさを称賛して飛び跳ねた。 しかし、またも制止の声が上がった。 「むきゅう、おまちなさい!」 「ゆゆっ!?どすのめいあんだよ!どこもおかしいところはないよ!」 「あのおねえさんをたすけたあとはどうするのかしら、むきゅ?」 「ゆっ?おうちにかえらせてあげるよ!」 「だめよ、どす!おねえさんをにがしたら、ほかのにんげんさんたちにこのむれのことをいうわ! おそろしいにんげんさんたちがこのゆっくりぷれいすのことをしったら、よこどりしようとするにちがいないわ!」 「言わないわ!絶対に秘密にしておくわ」 私はそこで口を挟んだが、黙殺されてしまった。 「それに、にんげんさんはゆっくりできないけど、ちからだけはあるわ。 にがすよりも、このむれでかってあげたようがいろいろとやくにたつわ、むきゅ!」 「ゆゆっ!ぱちゅりーはかしこいね!そういえばそうだよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「てんさいてきなゆっくりできるひらめきだよ!!さすがぱちゅりーだね!!」 ドスまりさ以下の群れのゆっくり達は、ぱちゅりーの提案に満足して飛び跳ねていた。 「じゃあ、おねえさんはここでかってあげるよ!おにいさんにはどすすぱーくをうつよ!」 「むきゅ、まって!つがいがいないのはかわいそうだわ。 せっかくおにいさんとおねえさんがそろっているんだから、つがいでかってあげましょう! かわいいあかちゃんがうめないと、すとれすでにんげんさんがしんでしまうわ!」 「ゆゆぅ~!!ほんとにそのとおりだよぉ!!」 「さすがぱちゅりーだね!どすはそこまできがまわらなかったよ!!」 「あかちゃんがうめなかったらゆっくりできないもんね!!」 「すっきりができなかったらすとれすでしんじゃうところだったわ!あぶないところだったわね!!」 ドスまりさが穴の口からこちらを覗き込み、満面の笑みを浮かべて猫なで声をかけてきた。 「ゆゆぅ~♪よかったね、にんげんさん! にんげんさんたちはこのむれでかってあげるよ!! こわいあめさんやれみりゃからまもってあげるからね!!もうあんしんだよ!!」 「ゆっゆっ♪ゆっくりしていってね!!」 「にんげんさんも、こうしてみるとかわいいかもしれないのぜ!!」 「がんばっておせわするんだねー、わかるよー」 ペットを手に入れたゆっくり達は浮き立っていた。 冗談ではない。ここから出られなければなにも解決しないのだ。 あの車の発信機をたどって、この群れはすぐに発見されるだろう。 あの十三匹のゆっくりが再び施設に連れ戻されてしまう。 「みんな、お願い、聞いて!私たちはここに住めないの。 お願いだから家に帰らせて!」 「ゆっ、れいむのおねえさんをかえらせてほしいよ!」 私のれいむがドスまりさに要求するが、ドスまりさ達は答えた。 「ゆゆっ!だいじょうぶだよ!ちゃんとゆっくりできるごはんをあげるよ! おねえさんをいじめるゆっくりはどすがゆるさないよ!だからあんしんしてね!」 「ゆっ、がんばってかわいがってあげるよ!」 「でも、れいむのおねえさんにはおうちがあるよ!かえりたがってるよ!」 「しらないところでふあんなんだねー、わかるよー」 「むきゅ、れいむ、よくきいて。 じこちゅうしんてきでみがってでらんぼうでちせいのないにんげんさんたちにかこまれて、 おねえさんはほんとうにゆっくりできていたかしら?」 「ゆゆっ?」 「もちろん、にんげんさんは、さいしょはにんげんさんのなかにいたいとおもうでしょう。 でも、それではにんげんさんはずっとやばんなかとうせいぶつのままだわ。 ゆっくりのなかでそだてて、にんげんのしらないしんじつのゆっくりをおしえてあげれば、 いままでよりもずっとずっとゆっくりすることができるのよ。 ながいめでみれば、それがにんげんさんのためなのよ!むきゅ!」 「………ゆっくりわかったよ!」 私は耳を疑った。 何を言った? 私のれいむは、今、何を言ったのだ? 「このむれはすごくゆっくりできてるよ!おねえさんもゆっくりさせてあげてね!!」 「だいじょうぶだよ!!どすたちにまかせてね!!」 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 穴の淵を取り囲み、「ゆっくりしていってね」を連呼する群れのゆっくり達。 その表情には心底からの善意と愛情が浮かんでおり………私はぞっとした。 「れいむ!!聞いて、れいむ!! 私はここにはいられないのよ!!帰らなくちゃいけないのよ、れいむ!お願い!!」 「だいじょうぶだよ!!このむれはほんとうにゆっくりできるむれだよ!! おねえさんがすんでいたおうちよりもずっとずっとゆっくりできるんだよ!! れいむもここにすむことにしたよ! れいむがずっといっしょだよ!だからあんしんしてね!!」 私のれいむ。 お祖母ちゃんのれいむも、お母さんのまりさも、そしてこのれいむも、 生まれてからずっと私が面倒を見てきた。 ずっとれいむは私になついていた。 私もれいむも互いに愛し合い、人間とゆっくりではあっても、家族だった。 家族だった、そう信じていたのに。 「駄目なのよ、れいむ!お願いだから私の話を聞いて!本当に時間がないの!」 「ほんとうにだいじょうぶだよ!!むれのみんながおねえさんのめんどうをみてくれるよ!! とっても、とってもゆっくりできるんだよ!!れいむのいうことをしんじてね! あんまりわがままをいうとどすにしかられちゃうよ!!」 信じていたのに。 それなのに今、私のれいむは、私を裏切って―― 裏切って? なにを裏切った? なにが変わった? 「もりのなかでくらすのはふあんだとおもうけど、 むれのみんながなんでもおしえてくれるからね! これからはゆっくりみんなのいうことをきいてね!!だいじょうぶだからね!!」 いや、れいむは裏切ってはいない。 れいむは依然として家族だった。 家族として、私を愛し、私の幸福を第一に考えていた。 変わったのは立場だけだ。 今ここでは、ゆっくりが人間よりも強い。 そしてこの場では、あらゆる幸福と正誤は、ゆっくりの基準で定められることになる。 今、恐ろしい実感が背中を這い回り、私は震えていた。 完全な善意に対しては、一切の反論が無力だ。 逃げ場はなかった。 続く
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ゆっくり家庭用品 ここはゆっくりたちが見つけたおうちだよ!はやくでべっ 瞬間。なにやら騒いでいたゆっくり共の舌を残らずひきちぎった。 その後は台所の流し台の角に打ち付けて生ゴミ入れとして使った。 他にも何匹か居たので廃油のみを食料とし、ひたすら飲ませて処理させる役、 カビ、ホコリ、ヘドロ、汚れのみを食料とし、こそぎ落とさせて食わせる役、 生えてくる体毛を全て刈り取り燃料とし、表皮面積を増やして再生してくる表皮を尽く布巾としてちぎられる役・・・。 数年間こき使ってきたけど未だにしぶとく長生きしてるし、なんだこいつら全然害獣じゃないじゃん。 持ち場に打ち付けてずっと固定させてるから逃げようともしないし、ずいぶんと従順なんだな。 人語を喋るのが気に食わないという人も居るが、こいつらの叫びと訴えは日々の心地よさそのものだ。